「老後を見据えて、貯蓄はいくら必要か」と問われると、多くの人は「2,000万円」と答えるでしょう。しかし、その金額は本当に正しいのでしょうか。本記事ではAさんとBさん、2組の夫婦の事例とともに、老後を見据えたライフプランニングの注意点について解説します。
2,000万円貯めても足りない…月収65万円の50歳サラリーマン、同い年妻との楽しみな老後に発生する「とんでもない不足額」【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

本当に老後資金は「2,000万円」必要なのか?

「これからの将来、夫婦で老後2,000万円が必要となる」そんな言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。本当に、将来のために全世帯が2,000万円を準備しなくてはいけないのでしょうか? この記事では、この2,000万円問題をどう捉えるべきか。AさんとBさんの事例を踏まえて解説していきたいと思います。

 

2,000万円問題について

2016年6月に金融庁より公表された、金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」という報告書において記載のあったある一部分について、「2,000万円問題」という形で大きく取り上げられたことにより話題となりました。

 

この問題は、およそ35ページ、2万5,000文字にわたる膨大なレポートの中の、たった2〜3行の文章が切り抜かれ、一人歩きしたことで大きな波紋を呼びました。その切り抜かれたレポートの一部分とは、下記のとおりです。

 

65歳以降の収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になる。

 

日本は長寿化が進んでおり、平均寿命は伸び続けています。65歳から95歳まで生きたとすると、30年間で2000万円の取り崩しが必要になるということです。

 

内訳

実収入 20万9,190円
実支出 26万3,718円

実収入 20万9,190円-実支出 26万3,718円→5万4,528円(約5万円)
約5万円(1ヵ月)×12(ヵ月)×30(年)→約2,000万円

 

上記の数値は、統計データをもとに計算されています。では、実際の世帯の収支を当てはめてみるとどうなるのでしょうか。

月収45万円、老後に「2,700万円」の貯蓄ができるAさん夫婦のケース

家族構成
・ご主人様 会社員(45歳)
・奥様   会社員(45歳)
・子供   1人(高校生)

 

現在の収支

1ヵ月の手取り収入 約45万円

1ヵ月の支出
生活費  15万円
住宅ローン       11万円(65歳で完済)
教育費           5万円
娯楽費           3万円
ご主人様お小遣い      3万円
保険料           3万円
貯金・運用         5万円
        合計 約45万円

 

65歳時に予想される収支

収入

年金収入     22万円
資産運用取り崩し   3万円
      合計 25万円

支出
生活費    10万5,000円(15万の0.7として計算)
住宅費         0円(住宅ローン完済)
娯楽費        3万円
ご主人様お小遣い   3万円
保険料        1万円(教育費分は解約)
    合計 17万5,000円

収入25万-支出17万5,000円→7万5,000円のプラス
     7万5,000円×12ヵ月×30年→2,700万円のプラス

 

固定資産税や自宅の修繕、冠婚葬祭費など、定期的な支出や突発的な支出は予想されますが、ある程度貯蓄が見込まれる状態となっていると思われます。