都心の新築マンション価格が高騰を続けています。マンション価格高騰の要因の1つになっているのが、都心に続々と誕生している「タワーマンション」ですが、“億超え”が当たり前の都心タワマンを買っているのは、富裕層や投資家だけではありません。本記事ではCFPの伊藤貴徳氏が、タワマンを購入したAさん夫婦の事例とともに、住宅ローン返済プランの注意点について、解説します。
栃木から上京の世帯年収1,400万円、30代パワーカップル「夢のタワマン」購入も…ジム解約→河原をランニングの節約生活へ。無謀すぎた「住宅ローン返済額」【CFPが解説】  (※写真はイメージです/PIXTA)

30代パワーカップル、都内の1億円タワマン購入を決断

『不動産流通研究所:首都圏新築分譲マンション動向2023年7月』によると、首都圏の新築マンションの平均価格は9,940万円となっています。特に東京23区においては1億3,340万円という高値となっています。

 

長期的に見ても首都圏の不動産市場は上昇を続けていますが、その一役を買っているのがタワーマンションなどに代表される高級マンションです。その魅力に惹かれ、Aさん夫妻は都内でも一等地でタワマンを購入しました。理想の生活を手に入れたはずでしたが、次第に計画が変わってきたようです。一体2人の身になにが……。

 

地元にはない、都心の高層階から眺める夜景に憧れて…

Aさん夫妻は共に33歳。結婚7年目です。お互い幼いころから知った仲で、大学入学とともに地元の栃木県から上京しました。上京当時から交際を続け、同じ有名私立大学へ入学し、東京で就職しました。年末年始や盆、両親の誕生日には互いの実家へ帰省して顔を見せたりと、いい距離感で東京と実家の栃木県を行き来しています。

 

自然の豊かな土地で生まれ育った2人にとっては、上京当初、東京の生活は刺激のあるものだったようで特に都心の高層階から眺める夜景は2人のお気に入りのひとつでした。「いつかは、こんな景色を眺めながら暮らしてみたいね」と上京当初から話してはいたものの、当然そんなことは叶わぬ夢と思い、日々の生活を過ごしていました。

 

しかし、いまから1年前、ふとタワーマンションの広告に目が行きます。

 

「もしかしたら、いまだったらタワマンにも手が届くんじゃないかな?」

 

もともと成績優秀だった2人は、大学卒業後お互いに都内の有名企業へ就職。いまや俗にいうパワーカップルとなりました。「ここならお互いの職場へのアクセスもいいし、なにより部屋からの眺望がよさそう! 一度、どんなものか話を聞いてみよう」と、都内の新築タワーマンションのモデルルームへ足を運びました。

 

営業マンからすると、有名企業のパワーカップルは願ってもいないお客様でしょう。マンションについての詳細な説明を受け、Aさん夫妻はマンションに一目惚れ。気に入った部屋の販売価格は1億円とのこと。2人にとっては見たこともないケタの金額でしたが、思い切って購入へ踏み切ることにしました。

ボーナス返済を融資の30%に充て、タワマン暮らしスタート

Aさん夫妻はペアローンを選択し、お互いに年収を合算してローンを組むことにしました。銀行の融資可能額は、一般的に年収の7〜8倍を上限とする銀行が多く、Aさん夫妻の年収であれば今回の購入金額は融資可能な範囲でした。

 

事前審査が下りたとき、「念願のタワマンに住める!」と2人は喜び、すぐに売買契約を締結。憧れのタワマン暮らしを始めました。

 

<Aさん夫妻の住宅ローン返済プラン>
・マンションの購入価格:1億円
・Aさん夫妻の世帯年収:1,400万円(夫750万円:妻650万円)
・ペアローン希望元利均等返済借入期間:30年(定年退職までに返済完了)
・金利:0.475%(変動金利)
・毎月返済額:20万8,666円 うちボーナス返済額:107万4,126円(年2回の合計)

 

「返済比率(1ヵ月の収入に対するローンの返済の割合)は20〜25%程がいいですよ」と営業マンのアドバイスをもとに返済金額を調整し、融資の30%をボーナス返済にすることで毎月のローン返済額を返済比率25%の約21万円に抑えることにしました。

 

<ボーナス返済を組み込まない場合>
・毎月の返済額        29万8,094円
・Aさん夫妻の手取り月収 約82万円
・返済比率         約36%(29万8,094円÷82万円)

 

<借入額の30%をボーナス返済とした場合>
・毎月の返済額        20万8,666円
・ボーナス返済        53万7,063円×2
・Aさん夫妻の手取り月収 約82万円
・返済比率         約25%(20万8,666円÷82万円)