「老後を見据えて、貯蓄はいくら必要か」と問われると、多くの人は「2,000万円」と答えるでしょう。しかし、その金額は本当に正しいのでしょうか。本記事ではAさんとBさん、2組の夫婦の事例とともに、老後を見据えたライフプランニングの注意点について解説します。
2,000万円貯めても足りない…月収65万円の50歳サラリーマン、同い年妻との楽しみな老後に発生する「とんでもない不足額」【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

月収65万だが、老後に「2,520万」の不足になるBさん夫婦のケース

家族構成
・ご主人 会社員(50歳)
・奥様  専業主婦(50歳)
・お子様 2人(中学生)

 

現在の収支

1ヵ月の手取り収入 約65万円

1ヵ月の支出
生活費         20万円
住宅費         18万円(賃貸)
教育費         10万円
娯楽費        5万円
ご主人お小遣い    4万円
保険料        3万円
貯蓄、資産運用    5万円
        合計 約65万円

 

65歳以降に予想される収支

収入
年金収入      約32万円
資産形成の取り崩し    3万円
        合計 35万円

支出
生活費           14万円(20万円の0.7として計算)
住宅費           18万円(賃貸)
娯楽費          5万円
ご主人お小遣い      4万円
保険料          1万円(教育費分は解約)
           合計 42万円

収入35万円-支出42万円→毎月7万円のマイナス
         30年なら2,520万円の不足

 

Bさん家族のほうが、収入が多い状態ではありましたが、65歳以降30年間で2,520万円が不足するというとんでもない結果に。これでは2,000万円老後までに貯められたとしても安心はできません。大きな要因としては、収入と支出がともに高い水準でバランスを保っていたため、65歳以降に年金生活となったことで収入が下がったものの、支出は変わらず収入ダウン分がそのまま不足額へとつながることでしょう。

 

ここでお伝えしたいポイントは、

 

1.収入が多いからいい
2.子供が独立する時期が早いからいい
3.住宅を購入して、ローン完済以降の住宅費がかからないからいい
4.生活費を低く抑えているからいい

 

というわけではないということです。それぞれの家庭に合わせた収支バランスや適切な家計の設計をすることが大切です。長いあいだ勤め上げた会社を退職し、やっとゆっくり夫婦の時間を過ごせる老後。楽しく暮らしていくためにも、将来の収入と生活費とのバランスをいまのうちからイメージしておきましょう。

2,000万円問題を我が家で起こさないためのシンプルな法則

シンプルかつ究極の法則は、収入-支出がマイナスとならないようにするということです。将来の支出を把握することはもちろん、それぞれの方法についても理解しておくことが大切です。

 

支出を減らすポイント

1.固定費の見直し

・保険料、住宅費、携帯料金など
・賃料を一生払い続けることがリスクと考える場合は住宅購入も検討

 

2.変動費の見直し

・日々の生活費を可視化しておく

 

3.収入を増やすポイント

・65歳以降の雇用の継続で、収入を得る
・年金の繰下げ受給で、年金額を増やす
・資産形成による効率的な資産の運用

 

2,000万円問題の発端となった、金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」は、結果として、「将来、私たちの暮らしに2,000万円ものお金が足りなくなる!」というようなイメージを強く根付かせてしまった印象があるかもしれません。

 

しかし、すべての報告内容を見てみると、実は日本のお金取り巻く現状を冷静に分析し、これからの対策と方針が詳細に書かれた、とてもよくできたレポートだということがおわかりいただけると思います。このレポートで知っておくべきポイントは、またの機会にご紹介したいと思います。

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表