厚生労働省の調査によると、会社勤めを終えた人が受け取る退職金の金額は20年間で1,000万円以上減っていることが明らかになっています。金額が減るだけならまだしも、退職金の支給は義務ではないため、20年後、30年後の未来に勤め先から退職金制度そのものがなくなってしまうリスクも十分に考えられます。そう考えると、「退職金で住宅ローンを完済して…」という人生設計を組むことがいかにキケンなことかがわかるのではないでしょうか。詳しくみていきます。
えっ、2,000万円もらえるんじゃなかったっけ?…「退職金で住宅ローン完済」皮算用の40歳・会社員を待ち受ける〈ショッキングな未来〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

退職金支給額は過去20年間で「1,000万円」も減少

ただ、少し過去を遡ってみると、退職金を前提にした人生設計がいかに危ういものなのかがわかります。厚生労働省『就労条件総合調査』によると、退職金の平均額は右肩下がりの推移を続けており、1997年に2,868万円だった支給額は2017年には1,788万円に。20年間でなんと1,000万円以上も減っているのです。

 

仮に同じスピードで支給額が減るとすると、現在40歳のサラリーマンが定年を迎える20年後、大企業における退職金の支給額は1,000万円ということになります。「ローンを完済しても手元に1,000万円残る」と想定していた人にとっては、受け入れがたい未来です。

 

上記は乱暴なシミュレーションではありますが、社会情勢や企業の財務状態によって支給額が変動することは事実。

 

調査機関のデータや、直近で退職した先輩の話から自身が定年退職時に受け取れるであろう退職金額を推定し、それを前提に老後のマネープランを設計するのはキケンです。退職金は法律で支給が義務付けられているものではありませんから、上記のような情勢の変化によって退職金規定が変わり、勤め先の会社から退職金制度そのものがなくなってしまう可能性もゼロではないのです。

 

定年退職が目前に迫っている会社員であれば、退職金の使い道についてあれこれ思いを巡らせてみたくもなるでしょうが、定年を迎えるのは20年以上先というような段階でシミュレーションしてみても、それは「捕らぬ狸の皮算用」。定年時、実際に手にする退職金額を知って「えっ、2,000万円もらえるんじゃなかったっけ…」と絶望する可能性が高いといえるでしょう。

 

60歳で引退するか、嘱託社員として同じ会社で働き続けるか。選択肢は人それぞれですが、いずれにしても、多くの場合60歳を機に現役時代に比べて大幅に収入が減少します。ゆとりある老後を迎えるには、大企業で平均2,000万円、中小企業は平均1,000万円ほどとされる退職金は「もらえればラッキー」という程度に捉え、仮に想定通りの退職金を受け取れたとしても、緊急時以外はそれに手を付けなくても済むように現役のうちから資産形成を行っておくことが重要です。