厚生労働省の調査により、職場で虐待を受けた障害者が昨年から30%増えたことがわかりました。近年は減少傾向にあったのに、何があったのでしょうか。みていきましょう。
平均月収31万円「福祉・介護職員」による「障害者への虐待」大幅増、意外な理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ「障害者」を虐待してしまうのか? 

そもそも障害者支援施設は、ハンディキャップにより日常生活や就労が困難な人を支援する社会福祉施設。色々な分類の仕方があり、まずは法律による区分。18歳以上を対象とした「障害者総合支援法」による障害福祉サービス(図表1)と、18歳未満を対象とした「児童福祉法」による障害福祉サービス(図表2)に分けられます。

 

出所:厚生労働省『障害福祉サービス等について』より
【図表1】 出所:厚生労働省『障害福祉サービス等について』より
【図表2】

 

また給付で分類すると、介護を目的とした「介護給付」と職業訓練などを目的とする「訓練等給付」に分けられます。さらに自宅から通う「通所系」、施設に入所する「施設系」、利用者の自宅を訪問する「居宅系」といった分類も。

 

そんな障害者支援施設での虐待。報道のたびに「許せない!」の声が聞こえてきますが、なぜ、障害者への虐待はなくならないのでしょうか。

 

厚生労働省の調査では虐待をしてしまった理由として、「教育・知識・介護技術等に関する問題」「職員のストレスや感情コントロールの問題」「倫理観や理念の欠如」など、職員個人の資質を理由としたものが多くを占める一方、「組織風土や職員間の関係性の悪さ」「人員不足や多忙さ」など、構造的な問題への指摘は2割にとどまっています。

 

ただ2割にとどまるものの、構造的な問題が改善すれば、障害者への虐待は減っていくはず。たとえば給与。障害を抱えている人を相手にする仕事は、通常とは異なるストレスがあり、体力的にも精神的にも負荷が大きいでしょう。このような仕事に対し、やりがいを感じることができ、さらに報酬面でも恵まれていれば、虐待の抑止に繋がるはずです。

 

厚生労働省『令和4年障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査』によると、障害福祉サービスに従事する、福祉・介護職員の平均給与額は31万7,540円。また障害福祉サービス従事者の資格別平均給与をみていくと、介護福祉士で34万3,540円、社会福祉士で35万6,400円。一方、厚生労働省の別調査では、労働者の平均給与(所定内給与額)は31万1,800円。障害福祉サービス従事者の給与は「平均的」といえます。

 

福祉関連の仕事は「きつくて低収入」というイメージが定着し、長らく問題視されてきました。そこで障害福祉サービスに従事する職員のさらなる賃金アップを目的とした「障害福祉サービス等処遇改善加算」などによって待遇を改善。調査によって結果にばらつきはあるものの、給与は「平均的」といえる水準にまで引き上げられています。

 

しかし「平均的な給与水準で障害者と対峙する仕事ができますか?」と問われたら……「ちょっと割にあわないかな」と感じる人が多いのではないでしょうか。人手不足に悩まされる、障害福祉サービス業界。虐待といった問題解決のためにも、従事する人たちのさらなる待遇改善、賃金アップがのぞまれています。