日本企業の多くが「60歳定年制」を採用していますが、実際に60歳で引退する人は、全体の1割程度。9割程度のサラリーマンが「定年後も働く」という選択をしています。60歳で引退する人と65歳まで働く人の間には、5年間の収入の有無だけでなく、65歳から受け取れる年金額にも差が生じることになりますが、その違いは一体どの程度になるのでしょうか。詳しくみていきます。
同期の9割が「継続雇用」を選ぶなか、60歳で“完全引退”の元・会社員…5年後に知った〈年金格差〉に大後悔 (※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマンのおよそ9割が「定年後も働く」ことを選択するが…

会社勤めをしている人は、多くが60歳で定年を迎えます。ただ、2013年には「高年齢者雇用安定法」が制定され、2025年4月以降は、65歳までの雇用確保が企業の義務として課されることになっています。さらなる法改正により、70歳までの就業確保が努力義務になるなど、60歳以降も働ける環境が整備されつつあります。

 

実際、厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告』によると、65歳までの高年齢雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%。66歳以上も働ける制度を導入していている企業は40.7%に上り、定年制そのものを廃止した企業も3.9%ありました。

 

そんななか、60歳を迎えた会社員は、どのような選択をしているのでしょうか。

 

同調査によると、60歳定年企業で過去1年間(21年6月~22年5月)に定年に到達した人は37万9,120人。このうち継続雇用された人が87.1%で、継続雇用を希望せずに「定年退職した人」は12.7%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった人は0.2%でした。

 

60歳以降も働くという選択をする理由は、「仕事が生きがいだから」「できれば引退したいが、経済的に不安だから…」など、人それぞれでしょう。継続雇用制度には、それまで長く勤めてきた職場で、変わらぬ仲間と一緒に働けるというメリットがある一方、多くの場合、再雇用では60歳前に比べて給与水準は下がりますし、雇用形態も「嘱託社員」や「契約社員」という形にシフトします。

 

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調べによれば、定年後の仕事の内容について、およそ4割の企業が「定年前と同じ仕事であるが、責任の重さが軽くなる」としています。当事者として大きな責任を負って向き合っていた仕事に、定年後はサポート役としてかかわることになるケースが増え、また給与も大きく減るとなれば、モチベーションを保つのは容易ではないかもしれません。

 

加えて、雇用形態や役職が変わるとはいえ、60歳を過ぎたベテラン社員が現場に居続けることで、「組織の新陳代謝」が停滞してしまう懸念も。若手社員からは変に気を遣われ、職場への居づらさを感じて働くことを断念してしまうケースが意外にも多いというのが実情です。