国土交通省の調べによると、初めて分譲マンションを購入する世帯主の平均年齢はおよそ40歳。物件価格の2~3割に相当する自己資金を用意しようと思えば、それくらいの年齢になるのが自然です。ただ40歳時点で30年の住宅ローンを組むことには、当然リスクがあります。かといって、30歳で全額ローンでマイホーム購入に踏み切ることも、正解とはいえなさそうです。それぞれのメリットとデメリットを比べてみましょう。
マンション購入者の平均的な頭金〈約1,400万円〉…「貯まるまで待てない」30歳・会社員の“しんどすぎる”住宅ローン返済負担 (※写真はイメージです/PIXTA)

片働きでは「しんどい」30歳・フルローンでのマンション購入

ローンの返済負担を顧みるとできるだけ多くの自己資金を用意したいところですが、頭金0、つまり“全額ローン”でも購入は可能です。もちろん融資を希望する人の属性にもよりますが、実際にマンション購入者の1割程度は頭金なしだとする調査もあります。

 

では30歳のサラリーマンが頭金なしでマンション購入に踏み切ったとしたら、どのような返済プランになるのでしょうか。購入するマンション価格は三大都市圏平均の5,048万円、返済方式は元利均等・金利は年0.5%・返済期間30年として、シミュレーションしてみます。

 

このケースでは、総支払額は5,437万933円で、利息分は389万933円。月々の返済額は15万1,030円となります。厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、サラリーマンの給与は30代前半では月収29.7万円・年収495.9万円が平均であり、年収に占める返済負担率は36%。適正な返済負担率は20~25%前後といわれていますので、かなり無理のある水準です。片働きでは、家計はあっという間に破綻に至ってしまうでしょう。

 

一方、40歳で平均的な頭金を用意した場合は、どうなるのでしょうか。ほかは同条件で考えると、返済総額は3,888万2,484円。利息分は278万2,484円。月々の返済額は10万8,007円で、40代前半の平均年収600.8万円からすると返済負担率は21.5%ほど。これなら、片働きでも十分に返済していけるプランといえそうです。

 

こうして比べてみると、「マイホーム購入に頭金は必須」と考えるのが自然かもしれません。

 

しかし、30歳から40歳の間、頭金を用意している10年間の家賃負担についても考慮する必要があります。月の家賃が10万円だとすると10年間の総額は1,200万円。これも加味すると、総支払額は5,088万2,484円。全額ローンの場合との差は約350万円に縮まります。

頭金アリ・ナシのどちらが良いかは言い切れないが…

会社員として現役のうちにローンを完済すべく、頭金0で30歳で購入に踏み切るか、現役時代の返済負担率を抑えるために十分な自己資金を用意してから40歳で購入するか、どちらが良い方法なのかを言い切ることはできません。

 

頭金なしで早い時期に購入するメリットは、なんといっても、マイホームの買い時を逃さずに済む点でしょう。良い条件の物件に出会えたとき、「頭金が用意できていないから…」とあきらめる必要がないということです。一方で、上のシミュレーションでみた通り、毎月のローン負担が重くなることは大きなデメリットです。ローン返済で一杯いっぱいになってしまい、貯蓄ができないばかりか、趣味や自らのスキルアップのための投資に充てる資金も捻出できなくなってしまうリスクがあります。

 

一方、自己資金を用意した上で40歳になってからマイホームを購入するパターンにも、メリット・デメリットがあります。

 

代表的なメリットは、フルローンでの購入に比べて月々の返済負担を抑えられる点です。40代になれば、給与水準も上がっているという人が多いでしょうから、ローンを返済しながらも、ゆとりのある暮らしができそうです。

 

ただ、やはり心配なのが完済時の年齢。予定通り30年かけて返済するとなると、定年退職後もローンを払い続けることになります。適宜、繰り上げ返済を組み合わせるなどして、大事な老後資金に手を付けることなく完済できるよう計画的なプランを組みたいところです。