新卒から定年退職まで勤めた場合、大企業なら2,000万円、中小企業なら1,000万円程度受け取れるという退職金。日本の企業のおよそ9割がこの制度を導入しているといいます。半数以上の人が、受け取った分配金を「預貯金」に回していますが、少なからぬ人が、この「種銭」を使って投資デビューを果たしているようです。今回は、金融機関が「定期預金より高い金利が付く債券です」といって提案してくる仕組み債の実態をみていきます。
63歳・元大企業課長の老後資金「1,000万円」が消えた…〈債券〉とは名ばかりの“キケン”な金融商品「仕組み債」の実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

仕組み債には「キケンな商品」というイメージが定着したが…

一度の説明を聞いただけでは、投資経験の浅い顧客がそのリスクを理解できず、資産を大きく減らしてしまう可能性もある仕組み債。

 

手数料の高さから多くの証券会社が好んで販売していましたが、損失を被った投資家からは多くの苦情が寄せられています。23年6月には、ハイリスクな仕組み債を経験の浅い投資家に積極的に販売していたこと金融機関の勧誘姿勢が問題視され、証券取引等監視委員会が某地方銀行に業務改善命令を下すまでの事態に発展しました。

 

その一件はさまざまなメディアで報道され、「仕組み債=キケン」というイメージが広く流布しましたが、特定非営利法人 証券・金融商品あっせん相談センターの『紛争解決手続き事例』(2023年4月~6月)をみると、仕組み債に関する事例は30件以上。まだまだ活発に勧誘が行われていることがわかります。

 

事例をみてみると、営業マンが「必ず早期償還する」「いままでノックインしたことがない」というセールスを行い、勢いに押されたのか、リスクを理解できないままに仕組み債を購入して損失を被っている投資家の様子が目に浮かびます。事例に登場している顧客のほとんどが60代以上であり、なかには80代前半という人もいるから驚きです。

 

銀行や証券会社から、「定期預金よりもはるかに良い金利が付きます」などと金融商品の案内を受けた際には、その高いリターンがどのような仕組みで生み出されるものなのかを理解し、リスクについての疑問を払しょくできるまで、しつこく質問することが重要です。

 

熱心なセールスに心打たれたとしても、自分でリスクを理解できないのであれば投資をしないのが鉄則です。