昨今では頭金ナシ・フルローンでマイホームを購入する人が増えているようです。フルローンには、マイホームが欲しいときに買えるというメリットがある一方、返済総額が増えるというデメリットがあります。時間がかかっても自己資金を用意すべきか、買い時を逃さないためにフルローンを利用するのか…。長所と短所を天秤にかけ、慎重に検討する必要がありそうです。本記事では、6,000万円のフルローンで注文住宅を建てた40代“勝ち組”夫婦のローン返済をシミュレーションしていきます。
世帯年収1,200万円の40代夫婦〈フルローン〉で注文住宅購入…「共働きだから余裕」のはずの返済計画に潜む“まさかの落とし穴” (写真はイメージです/PIXTA)

フルローンのメリットとデメリット

住宅購入にあたっては、物件価格の2~3割に相当する頭金を入れるのが常識とされてきました。ただ、資材の高騰や建設現場の人手不足などが原因で物件価格が高騰を続ける中、それだけの自己資金を準備するのは容易ではなくなっています。

 

仮に6,000万円の注文住宅を購入する場合、2~3割といえば1,200万~1,800万円。それだけの自己資金を作る間に、マイホームの「買い時」を逃してしまう、というケースもあるでしょう。また、直近では金利上昇の兆しがみえているとはいえ、日本ではまだまだ低金利が続いていることから、まとまった自己資金は頭金にはせず、ローン金利以上の利回りをめざして何らかの金融商品で運用する、という選択をする人もいます。

 

そのような理由で、「フルローン」で住宅を購入する例も珍しくなくなっています。金融機関でも住宅ローンの顧客獲得競争が激化していることから、ネット銀行を中心に「フルローンでもOK」とするところも増えているといいます。

 

そんなフルローンには、大きく2つのメリットがあります。まずは、何といっても「マイホームの“買い時”を逃さずに済む」ということ。理想の物件に巡り合えたとき、頭金に充てるだけの貯蓄がなくても、フルローンを利用すれば、すぐに物件を購入できます。頭金の不足を理由に、マイホームを諦める必要がないということです。

 

また頭金を入れないため、まとまった現金を手元に置いておけるという安心感を得られることも、大きなメリットです。貯蓄のほとんどを頭金に入れてしまってから、病気や怪我などのハプニングに見舞われ、収入が途絶えてしまったとしたら……想像するだけでも恐ろしいことです。

 

一方、当然ながら頭金を入れた場合に比べて借入額・利息が増加するため、総返済額も大きくなるというデメリットはあります。また、なんらかの理由で将来マイホームを売却することになったとき、ローン残債が物件価格を上回る「オーバーローン」に陥る可能性が高まるという側面も。オーバーローンの状態で売却するためには差額分の現金を積み増す必要があり、最悪、身動きが取れなくなって自己破産……というケースも少なくありません。