マンション購入者(一次取得)の平均年齢は39.9歳。この年代の年収上位10%に入る2人が結婚したとすると、世帯年収は1,500万円を超え、条件によっては1億円近い住宅ローンを組むことも可能です。すると視野に入るのが、憧れの「タワマン暮らし」。共働きを続ければローンの返済はなんとかなりそうな水準ですが、不安も残ります。返済プランをシミュレーションしながら、詳しくみていきます。
背伸びして〈1億円タワマン〉を買った30代・勝ち組夫婦…年収はともに“上位10%”だが、迫りくる「ローン破産」の足音に戦々恐々 (※写真はイメージです/PIXTA)

収入上位10%のエリートでも「都内新築マンション」の購入は厳しい

不動産経済研究所によると、首都圏・新築マンションの平均価格は2021年に6,260万円、2022年に6,288万円と2年連続で過去最高を更新しバブル超え。東京都23区内に限ると、2023年1〜6月の新築分譲マンションの平均価格は驚愕の1億2,962万円を記録しており、平均的な年収のサラリーマン世帯が都心の新築マンションを買うのは、もはや夢物語になりつつあります。

 

新築マンションの価格が高騰している代表的な理由として、資材高や人件費の高騰で建築コストが膨らんでいることが挙げられますが、続々と供給される「タワーマンション」も、その要因の1つといえそうです。

 

木造住宅が密集する住宅地における災害発生時のリスク緩和や、高度成長期に建設された建築物の劣化に伴って各地で進行中の再開発により、タワーマンションは次々に生まれています。街のランドマークとなるタワーマンションは再開発の目玉企画とされることも多く、その注目度の高さによって、周囲の同等の物件より3割程度高い価格で取引されるケースも珍しくありません。こうして、新築マンション市場の平均価格が押し上げられているのです。

 

そんなタワマン市場を引っ張っている主体の1つが、「パワーカップル」です。「世帯年収1,200万円以上」「夫婦ともに年収700万円以上」など、パワーカップルの定義はさまざまですが、ここでは、夫婦ともに大卒で給与上位10%に入る夫婦を例に挙げてみましょう。

 

国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』によると、三大都市圏における新築マンションの購入者の平均年齢(一次取得)は39.9歳。厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、この年代の大卒正社員の上位10%に入る男性の月収(所定内給与)は53.4万円、女性で42.8万円です。平均的な賞与を手にすると仮定すると、男性は年収853万円、女性は年収685万円。2人合わせて年収1,500万円超と、周囲も羨望の眼差しを送る、まさに「勝ち組」です。

 

住宅ローンが適性か否かを判断する際の基準は「年収倍率」「返済負担率」「完済年齢」の3つ。「年収倍率」は5倍まで、「返済負担率」は20~25%、「完済年齢」は65歳まで、というのが理想的です。

 

仮にこの夫婦が夫の収入だけでマンションを購入する場合、借入は4,265万円まで。毎月の返済額は14.2万~17.7万円、返済期間25年というのが妥当ということになります。勝ち組とされるサラリーマンでさえ、一馬力では都内の新築マンションを購入するのは難しいということがわかります。