条件がそろえば1億円近い融資も引き出せるが…
一方、夫婦合算でマンション購入を考えるとどうでしょう。
2人の合計年収の5倍、7,690万円借り入れたとします。金利は0.5%、元利均等方式で返済期間25年のローンを組んだ場合、毎月の返済額は27万2,741円。世帯年収に占める返済負担率は21.3%に収まっており、余裕のある返済プランといえる範囲です。勝ち組夫婦が協力すれば、マンション価格高騰で騒がれているなかでも、8,000万円弱の物件であれば購入を検討できるというわけです。
さらに、勤め先や勤続年数などの条件がそろえば、1億円近い融資を引き出すことも可能であり、憧れの「新築タワマン」も視野に入ります。仮に上と同条件で1億円を借りた場合、毎月の返済額は35万4,669円。世帯年収に占める返済負担率は27.6%となります。
表面上の返済額をみた限り、少々負担感はあるものの無理ではない水準といえます。
しかし、タワマン暮らしには分譲マンションならではの「管理費」や「修繕積立金」などのランニングコストがかかることを考慮すると、「負担感のある」ローンを組むのは考え物です。
国土交通省『平成30年度マンション総合調査』によると、タワーマンションの平均管理費は月1万5,726円。これは、通常の分譲マンションの1.4倍の水準です。また、前出の調査によると、タワーマンションの平均積立修繕金は月1万2,305円。多くのタワーマンションが「修繕積立金不足」に陥っているという調査結果もあり、今後、このコストは上がることはあっても、下がることは考えにくいというのが実情です。
病気や怪我により「就労不能」に陥るリスクに「離婚」のリスクも…
管理費や修繕積立金などのコストを想定済みだとしても、病気や怪我で就労不能になるリスクまで考慮できている人は多くないかもしれません。そんな事態に陥れば当然医療費の負担が発生する上、1人の収入でローンを返済することになります。仮に夫の収入のみで月35万円ほどの返済を行う場合、年収に対する返済負担率は約5割。家計はあっという間に破綻してしまうでしょう。
加えて、どうしても目を逸らすわけにいかないのが「35%」という日本の離婚率。
仮にこのパワーカップルが離婚してしまえば、マンションに「住み続ける」か「売却する」のいずれかを選択することになりますが、ローンを一括返済できる金額でマンションが売れるとは限りません。ローンの残債が物件価格を上回る「オーバーローン」の場合、現金を積み増さなければ売却ができないことにも注意が必要です。
「都心の新築」のこだわりを捨て、どちらか一方の収入で返済可能なプランを
もちろん、病気や怪我、離婚などをきっかけにローン負担が増して最悪のケースとして破産に至る、というのは住宅ローンを利用している限り、多かれ少なかれ誰もが抱えるリスクです。
ただ、貯蓄のほぼすべてを頭金に入れてしまったり、返済負担が極端に重かったりすると、「住宅ローン破産」のリスクが高まることを認識すべきでしょう。
毎月の返済が苦しく家庭から余裕が失われれば、些細なことでぶつかり合いを重ね、離婚のリスクが高まることは想像に難くありません。
せっかく手に入れたマイホームでの暮らしを長く楽しみたいのであれば、かなり背伸びしなければ手が届かない「都心の新築」というこだわりを捨て、夫婦どちらか一方の収入で十分にやりくりできる住宅ローン返済プランを検討する必要があるのかもしれません。