(※写真はイメージです/PIXTA)

メタバースという言葉をよく聞くようになりました。元金融担当大臣秘書官であり日本初アートオークション会社の株式上場を主導した倉田陽一郎氏(現・Shinwa Wise Holdings社長)は、今後メタバースはより私たちの社会に浸透していき、近い将来、誰も見たことのない世界が構築されていくだろう、と話します。倉田氏の著書『アートが変える社会と経済 AI、NFT、メタバース時代のビジネスと投資の未来』(悟空出版)より、一部抜粋して紹介します。

「仮想のアート」がリアルの感動を強化する?

しかし果たして、メタバース内で時間を過ごすことをそれほど多くの人が許容するようになるのでしょうか?

 

ここで大切になるのは、いかにメタバース空間が楽しく、意味のある充実した時間を過ごせる場所になるかというところにかかってきます。世界中の人たちがスマホを見て過ごすようになったように、メタバースが本当にスマホのような生活の一部になるのか。これは、トークノミクスを組み込んだこれからのメタバースの開発にかかっています。

 

ゲームも楽しいものでなければヒットしませんが、使い勝手やUI、UX19(ユーザーエクスペリエンス)のすべてが兼ね備えられていなければ、なかなか普及しません。となると、3D空間の作り込みも重要になります。無味乾燥な空間設計や文化性のない空間では誰も見向きもしません。

 

そこでアートが出てくることになります。空間の建築物から内装まで、すべてはアートのクオリティにかかることになります。

 

メタバースのアートの可能性は、リアルなアートの可能性を大きく打ち破ることになるでしょう。同時に、現実のアートの力を果たしてメタバースに移植できるのかという永遠の課題もあります。たとえば皆さんは、ゴッホの『ひまわり』の本物の作品を美術館で観たことがあるでしょうか? 

 

作品からパワーが出てきて、巨大なキャンパスに絵具を叩きつけて描いたようなその画風が、情熱を飛び越えたある種の狂気のようなものを観る者に与え、鳥肌が立つほどの力で押し返されるほどの気力を感じます。ゴッホはひまわりを描くのが好きで、東京のSOMPO日本美術館やミュンヘン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ロンドン、アムステルダムの美術館でも観ることができるので、機会があればその力を感じてみてください。

 

しかしそのゴッホの『ひまわり』をデジタル化してメタバースに組み込んでも、体が押し返されるような力を感じることができるでしょうか? 間違いなく油絵具とデジタル画質は異なるため、油絵の力強い筆のタッチがデジタルで表現できることはあり得ません。リアルな筆のタッチを表現するデジタル処理の技術はまだ発明されていません。いつの日かあの油絵の力強いエネルギーの謎が解き明かされ、デジタルの中で表現される時が来るのかもしれません。

 

近い将来、デジタル空間の中で、新たなアート表現が出てくるのは間違いなく、その表現は絵画では出しきれない力強いものである可能性を、これからのアーティストに期待したいと思います。

アートが変える社会と経済

アートが変える社会と経済

倉田 陽一郎

悟空出版

ブロックチェーンとコミュニティ経済のビジネスヒントがここにある! Web3時代、アートの投資価値は上昇!NFT、メタバース上で新たな評価を生む! アートが世界で資産価値としての存在感を増し、デジタルアートが出現する…

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