熟年離婚増加…その原因は「高齢化⁉」
なにはともあれ、長い会社員人生、なんとかゴールにたどりついた定年退職の日。多くの仲間に見送られ、持ちきれない花束を手に、寂しさと充実感が交錯するなか、帰路へ。
――退職金は老後、万が一のときのための備えとして貯蓄を……でも頑張ってきたご褒美として、夫婦で海外旅行くらい行っても罰は当たらないだろう
そんなことを考えながら家路を急ぐ人もいるかもしれません。しかしその先に、必ずしも幸せな老後が待っているとは限りません。
――長い間、お疲れ様でした。実は大切な話があって
そこで妻が切り出したのは「離婚」の二文字。ドラマのような話が、昨今、増えているといいます。いわゆる「熟年離婚」ですが、一般的に婚姻期間が20年以上の夫婦が離婚することを指します。その数、2021年で3万8,968件。離婚件数が18万4,386組なので、実に離婚する5組に1組以上が、長年連れ添った挙句に離婚という結末に至っているのです。さかのぼること20年ほど前の2005年には15.4%、さらにその20年前には12.3%だったので、熟年離婚は大きく増加しているといっても過言ではないでしょう。
熟年離婚が増加している理由はいろいろといわれていますが、そのひとつが高齢化、長寿化だという専門家も。仮に60歳で定年退職したとしたら、平均寿命から考えても、20年以上は夫婦水入らずの生活となります。子どもは巣立った、住宅ローンの心配もなくなった、でも夫婦ふたりの生活に希望なんて感じられないし、相手の老後なんて面倒見たくない……離婚するしかありません。
熟年離婚で年金を分割…手にする年金月額は?
「熟年離婚したい!」という人にとって、気になるのは経済問題。専業主婦の場合、65歳からもらえる年金は、満額で月6.6万円。会社員の夫は、自身の国民年金(老齢基礎年金)に加えて、厚生年金(老齢厚生年金)がもらえます。厚生労働省の調査によると、65歳以上の平均は17万円ほどで、専業主婦の妻と合わせると夫婦で23万円程度。老後の安心感が増す金額です。しかし離婚となると「ひとりで生きていけるのかしら……」と、不安でいっぱいになるでしょう。
そこで知っておきたいのが、婚姻期間中の厚生年金記録(保険料の納付実績)を、離婚時に夫婦で分け合う「離婚時の年金分割」。実際に年金分割をしている人は、婚姻件数に対して15%程度。そのすべてが熟年離婚だとすると、7割程度が年金分割制度を利用している、という計算になります。
ではどれくらい年金が増えるのかというと、厚生労働省の調査では平均3万円程度。国民年金が満額支給だとして、手にできる年金は月9万~10万円程度にしかならず、これで老後は十分とは言い難いでしょう。
実際は退職金も財産分与の対象となり得ますし、熟年離婚しても経済的に問題なし、というケースが多いようです。ただ、夫婦二人で生きていくよりは経済的に不安定なのは否めません。
――夫(妻)が定年退職したら離婚したい……
そう、少しでも考えているなら、金銭面でも用意周到に準備していくことをおすすめします。