バブル崩壊後の不況やリーマンショックのあおりが直撃した就職氷河期の被害者たち。なかには、能力は高くても思うように就職活動ができず「ようやく出た内定先がブラック企業だった」という不運に見舞われた人も少なくありません。そのようななか、『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が、Uターン転職した吉川さん(仮名)への取材から、氷河期世代が抱える“怒り”と“諦め”に迫ります。
手取り25万円の33歳・電車運転士「地元に帰って良かった」…東京在住時代、前職の先輩(40代後半)がつぶやいた“切なすぎるひと言”【ジャーナリストの実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「リーマン氷河期世代」の憂鬱

僕ら、2008年に起こったリーマンショック後に就職活動をした「リーマン氷河期世代」も気にかけてほしい。リーマンショックの余波のあった僕たち2012年卒の氷河期世代も、内定がとれたのはブラック企業だった。そこで病んで辞めていったのは、僕だけじゃないんです。

 

でも、やっぱり、僕たちより上の、40代の就職氷河期世代は悲惨だったと思います。運送会社で働いていた時、40代の社員は大学を出ても仕事がなくて職を転々としていた人が多かった。

 

40代後半の男性社員が、「結婚はしない。高望みしなければ生きていける。アパートで猫と暮らして、猫の餌代を稼いで、車を維持できれば、それでいい」と言っていました。すごく仕事のできる尊敬できる人でした。

 

安月給、見えない将来。どうしていいか分からなかった。そういう閉塞感があって、やっとそこから抜け出して、それなりに給与をもらっても社会保険料をバカみたいにとられて、税金もたくさん引かれてしまう。だから、手取りでみたら収入が高いわけでもない。どんだけ国から搾取されているの? 年金だってもらえるわけじゃないし、アホらしいですよ、ほんま。

 

社会に出た時期によって、世代によって、運命が変わる。苦労するか、良い暮らしができるか。そんな差があっていいんですか? なんで国はそういうつらい目に遭っている人にお金を出して救わないのか。

 

僕は今、不妊治療にどれだけお金がかかるのか悩んで、車を買うか買わないかを迷っている。生活だって、子どもがいなくて夫婦共働きだからなんとかなっている。できるだけお金を残すために節約して、残業して収入を増やすしかない。それが現実です、ホントに……。

 

働いて、税金を納めて、社会が成り立つようにしないと。日々、やっていくしかないんです。

 

 

小林 美希

ジャーナリスト