今後、住宅ローン金利は上昇していくのではないかという見方が強まっています。そんな中、すでに住宅ローンを利用している人たちのところには、金融機関から「うちならもう少し負担が軽くなりますよ」と、借り換えの提案が増えているようです。しかし、借り換えの場合は新築時のローン契約よりも審査が厳しくなることが多く、実際に「審査に落ちてしまった」という声が相次いで聞かれます。年収も勤務先も問題ないのに、なぜ審査に落ちてしまうのでしょうか。その要因を考えます。
「何回か繰り上げ返済もしているのに」..築8年のマンションに暮らす40代夫婦が住宅ローン〈借り換え審査〉に落ちたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

勤務先・年収は問題ないのに…借り換え審査に落ちた理由

上記のシミュレーションは、25年間にわたって0.5%というローン金利が続いたという仮定によるものです。日銀の金融政策の修正によって、大手銀行は23年8月に固定型の住宅ローン金利を引き上げており、今後も固定型・変動型ともに金利が上昇する可能性が高いとする意見が聞かれます。

 

前出の例では、金利が0.1%上がると月々の返済額は2,300円ほどプラスに、0.5%上がると月々1.1万円ほどのプラス、1%上がれば月々2.3万円ほどのプラスとなります。そうなると、家計はあっという間に窮地に追い込まれるでしょう。

 

昨今のように金利上昇の動きがあると、銀行から「返済負担を抑えるために、ローンの借り換えを検討してみませんか」というような提案が持ち込まれることが増えるようです。しかし、「金利負担を抑えられるなら…」と安直に考えるのは、ちょっと待った方がいいかもしれません。

 

なぜなら、住宅ローンの借り換えの際には、以下のような諸費用が必要となるためです。

 

①融資事務手数料:3~50万円程度(ネット銀行等では0円のケースが多い)

②保証料:0~45万円程度(ネット銀行等では0円のケースが多い)

③印紙税:2万円

④登録免許税:10万円程度

⑤司法書士報酬:5万~10万円程度

⑥全額繰り上げ返済手数料:3万円程度

⑦保証会社の事務手数料:1万円程度

 

上記はあくまでも目安ですが、総額100万円超となることもある借り換えのコストを想定しなくてはなりません。コストを上回る金利負担の軽減効果を得られるのか、見極める必要があるのです。

 

入念なシミュレーションの結果、借り換えに踏み切ることにしたとしても、一筋縄ではいくとは限りません。

 

「借り換えの審査に落ちてしまった。ショックです…」

 

とネットに書き込んだのは40代・世帯主の妻。東京郊外の新築マンションの購入から8年、たまたま目にしたチラシで、近所に支店のある銀行が金利優遇キャンペーンを行っていることを知り「まだローンも結構残っているし、少しでも負担が減るなら」と、借り換えの審査を申し込んだといいます。妻は「ほかにローンはなく、何回か繰り上げ返済もしているのに…」と書き込みを続けます。融資担当者も「勤務先や年収等は問題ない」と話していたようです。

 

それではなぜ、審査に通らなかったのか…その要因は「担保割れ」だったといいます。

 

実は借り換えの審査は、新規借入時と比べて厳しいケースが多いのです。その理由として、①「経年により物件の担保価値が下がっている」②「加齢により申込者の健康状態を悪化している」2つが挙げられます。

 

もちろん、現状の収入やほかの借入状況も審査対象となりますが、上の書き込みにあったように、物件の評価が下がっている分、審査は厳しくなります。とくに物件の担保評価がローンの残高を下回っている場合、借り換えの難易度はかなり高くなるというのが現実でしょう。

 

また②について、国土交通省の調べによるとほぼすべての金融機関が、ローン審査において「健康状態を考慮する」と回答していることがわかっています。新築で借り入れを行ってから年齢を重ねている分、病気に罹るリスクは高まっていますから、その分、審査を通るハードルは高くなるのは当然といえます。

 

その他、過去に「残高不足で奨学金の返済や公共料金の支払いが遅れた」というような軽微な事故を起こしているとか、借り換え審査を申し込む直前に転職をしていて、勤続年数が要件を満たしていなかった、という点も審査落ちのポイントになるようです。

 

審査に落ちてしまったことはたしかにショックかもしれませんが、前述の通り住宅ローン借り換えの手続きには諸費用がかかるため、総額でみると支払いが増加するケースもあり得ます。「担保割れ」の状況で複数の金融機関に審査を申し込む前に、緻密なシミュレーションを行い、借り換えにメリットがあるかどうか冷静になって検討してみるのがいいでしょう。