転職が当たり前の時代。そうはいってもシニア世代の親には子供の転職を理解できないという人もいるようで……。本記事では、Aさんの事例とともに大企業の早期退職について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
60歳夫は元エリート国家公務員、勝ち組夫婦の年金月28万円で「余裕の老後」だったが…〈なにかの間違いでは?〉自慢の大企業勤め「45歳息子の仰天行動」に唖然【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

大企業での「希望・早期退職者募集」

(株)東京商工リサーチによると、2023年1~5月までに「早期・希望退職者」を募集した上場企業は、20社(前年同期19社)と発表しています。コロナ禍の2021年に比べると大きく減少はしていますが、「2022年末から米国を中心に、海外の大手テック企業が相次いで人員削減を打ち出しており、国内でもコロナ禍対応を進めた業種や企業で、見直しに伴う人員削減が現実味を帯びている」ともしており、今後も大企業での早期退職募集は続きそうです。

 

出所:(株)東京商工リサーチのHP
[図表2]主な上場企業 希望・早期者募集状況 出所:(株)東京商工リサーチのHP

 

家計を考えるとそのまま勤め上げたほうがいいのでしょうが、

 

・「いま、居座ってもまた数年後に募集があるかもしれない。それなら若いうちに」

 

・「会社では自分の評価はよくないと思っている。会社に居続けても、辛いだけ」

 

といった理由で、「定年退職までいられそうもない」と判断されて、退職を決断される方も多いようです。

 

筆者は息子さんとは直接お話をしていませんが、当然息子さんのほうが大変な思いをされて転職に踏み切ったのだと思いますし、45歳という年齢で正社員に転職されたのはやはり優秀なのだと思います。もしかしたらいまのほうが本人はやりがいを感じてお仕事をされているのかもしれません。

 

20年以上も勤め上げた会社(しかも大企業)を辞めることを、育て上げてくれた親に告げることは、お子さん側からするとなかなか辛いものもあります。

 

Aさんのようにお子さんの退職にショックを受ける高齢者もいらっしゃるでしょうが、日本の終身雇用制度は崩壊しつつある、と捉えて広い心で接することも大事です。

 

「息子は住宅ローンもあるし、私立中学に通っている孫もいるので、退職金をもらったとしても家計もなかなか大変になると思います。女房は心配して内緒でいくらか渡したようですが、今後もまた『リストラされた!』となるかもしれません。経済的に援助しないといけないことも出てくるかもしれないので、憧れの分譲マンションも二の足を踏んでいます。正直私たちの老後までマズい状況に脅かされているんです」とAさんは不安そうに言います。

 

以前は孫たちを連れて度々遊びに帰ってきてくれた息子さんでしたが、転職後は「忙しいから」と言って、なかなか顔を出さなくなったそうです。Aさんは本来は優しい方なので、「もう少ししたらAさんのほうから奥さんを連れて息子さんのお家に行ってみたらどうですか?」と話してみました。

 

息子さんに会って、実際に暮らしぶりを見ていただければ、Aさん自身のこれからの終の棲家をどうするか(リフォームするか、マンションに移るか)、といった判断もできるようになる、と感じたからです。まずは、Aさんと息子さんが笑って話し合えるようになれるといいな、と思います。

 

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表