日本学生支援機構によると、大学生(昼間部)のおよそ2人に1人は奨学金を利用しているそうです(令和2年度調査)。奨学金は、金銭的な理由などに学ぶ機会を奪わせないための重要な制度ですが、人によっては“卒業後の人生”で大きな負担となる場合もあります。『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が、「奨学金の返済」に人生を振り回された男性から話を聞きます。
基本給12万円、30代会社員を苦しめた「奨学金の返済」…卒業後の人生を左右する“月1万7,000円”の重み【ジャーナリストの実録】 (※写真はイメージです/PIXTA)

故郷に戻っても続く苦悩…運送会社の正社員で基本給12万円

でも、故郷に戻っても運転士って潰しがきかないんですよ。仕事が限られていて。

 

奨学金の返済があるので、もうええわ、って就職したのが運送会社でした。電車の運転士以外の職業も気になって、ドライバーとして働くことになりました。

 

それまでとまったく違う世界。ライバル会社との価格競争が激しくて、僕の担当のエリアはいくら集荷しても赤字になっていました。通販の品物の配送が多く、安く請け負っているので数をこなす。ドライバーは完全にキャパシティオーバーの状態でした。

 

それではダメだと思って、集荷先に頭を下げて仕事をとって赤字を改善しました。もちろん、本社からも「営業強化」を命じられます。

 

僕は、配送は早く終えることはできたのですが、営業は嫌いでしたね。ライバル会社でなく、うちにお願いします、って。

 

みんな知らないと思うけど、街中で配送しているドライバーは営業もしているんですよ。営業がとれないと、田舎に異動させられるんです。

 

正社員でしたが、給与は安かったです。基本給が12万円。それにどれだけ配達できたかで歩合がつくんです。1日に50個しか配達できないと歩合はつきませんでした。

 

お歳暮のシーズンは稼げるので、良いときは月給が手取り30万円のときもありますが、歩合が少ないと手取り月10万円ということも。

 

この頃に交際していたのが妻で、給与が変動しすぎるのでは未来が見えないと思って、転職を決めて、今の会社で働き出しました。

 

奨学金の300万円は、利子が30万円つきましたが2年前に完済しました。大学時代にバイトで貯めた150万円を卒業するときに返して、残りを働きながら。

 

月1万7000円の返済でしたが、ホント、重かったぁ。特に運送会社で働いていたときは月によって給与が違うので、きつかったです。

 

大学の4年間、遊ばず、ずっとバイトして150万円貯めて良かった。もし今まだ300万円の借金があったら、終わってますね。オワコンですよ。いくら利子が低いといっても、借りるもんじゃないですね。

 

運送会社の時は年収350万円、これじゃあ、実家で暮らさないと生活できなかったです。その前の東京で運転士をしていた時は年収430万円。給与は良くても、心身はボロボロでした。

 

 

小林 美希

ジャーナリスト