●4-6月期決算の途中経過をみると全体で増収増益と好調な内容、製造業の業績は回復傾向に。
●輸送用機器や陸運業などは経常利益へのプラス寄与大だが海運業や卸売業はマイナス寄与大。
●企業の今年度業績予想は依然控えめ、更なる改善には国内外のマクロ環境安定が重要な要素。
4-6月期決算の途中経過をみると全体で増収増益と好調な内容、製造業の業績は回復傾向に
国内では、3月期決算企業による4-6月期の決算発表が続いています。8月4日時点で、東証株価指数(TOPIX)構成企業(金融を除く)のうち、約半数が決算発表を終えており、以下、ここまでの途中経過を確認していきます。2023年度4-6月期の実績は、前年同期比で売上高は5.3%増、営業利益は33.2%増、経常利益は13.4%増、純利益は13.8%増と、各利益項目が2ケタ伸び、増収増益の好決算となっています(図表1)。
製造業・非製造業の区分では、製造業が順に10.2%増、14.4%増、13.9%増、20.0%増、非製造業は0.3%減、67.6%増、12.8%増、7.3%増という状況です。2022年度は、原材料費の高騰などが製造業の業績に大きな影響を与え、製造業が不調、非製造業が好調という傾向が鮮明でしたが、今年度は円安進行や供給制約の改善を背景に、製造業の業績は持ち直しつつあるように見受けられます。
輸送用機器や陸運業などは経常利益へのプラス寄与大だが海運業や卸売業はマイナス寄与大
全体の経常利益は、前述の通り前年度比で13.4%増でしたが、この増益率への寄与度を業種別にみると、プラス寄与の大きい上位5業種は、電気・ガス業(14.4%ポイント、以下pt)、輸送用機器(10.4%pt)、陸運業(1.8%pt)、機械(1.4%pt)、空運業(1.0%pt)でした。一方、マイナス寄与の大きい上位5業種は、海運業(-7.2%pt)、卸売業(-4.7%pt)、化学(-3.3%pt)、鉄鋼(-1.1%pt)、電気機器(-0.6%pt)となっています。
やはり、前述の円安進行や供給制約の改善は、輸送用機器や機械の業績押し上げにつながったと思われ、また、インバウンド需要の回復は、陸運業や空運業の業績に強い追い風となったと推測されます。しかしながら、資源価格や市況高騰が一服したことは、海運業や商社を含む卸売業の業績にとって、かなりの向かい風になったと考えられます。決算はまだ半分終了したところですが、業種によってかなり業績に差が出ていることが確認されます。
企業の今年度業績予想は依然控えめ、更なる改善には国内外のマクロ環境安定が重要な要素
次に、2023年度の業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高が2.2%増、営業利益は7.7%増、経常利益は0.4%減、純利益は2.6%減でした。5月16日時点の集計と比べると利益予想はいくらか改善傾向にありますが(図表2)、依然として経常利益と純利益は減益見通しです。残り半分の決算を確認する必要はありますが、企業は業績に対し慎重な見方を維持している模様です。
4-6月期決算は、ここまで総じて好調な内容となっていますが、企業自身による2023年度の業績予想については、市場が予想する利益水準を5%~7%程度、下回っています。そのため、日本株の一段高には、更なる業績予想の改善が必要であり、それには、国内におけるインバウンド需要の回復継続や円相場の安定、米経済の軟着陸(ソフトランディング)や中国景気の持ち直しなどの実現が、重要な要素になると思われます。
(2023年8月8日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株“上昇”のカギを握る「企業業績」…4-6月期決算の途中経過をチェック【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト