70歳の男性「年金のもらい忘れ」で大損
たとえば、元会社員の男性。70歳で年金のもらい忘れに気付いたとしましょう。「5年の時効……ぎりぎりセーフ」と胸をなでおろしたかもしれませんが、ちょっと残念。特別支給の老齢厚生年金は全額もらえない可能性があります。
特別支給の老齢厚生年金は、昭和60年の法律改正により、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際に、受給開始年齢を段階的にスムーズに引き上げるために設けられたもの。昭和24年4月2日~昭和28年4月1日生まれの男性の場合、60歳から65歳になるまでに厚生年金の「報酬比例部分」を手にすることできます。
報酬比例部分は、老齢厚生年金や障害厚生年金、遺族厚生年金のいずれの給付でも年金額の計算の基礎となるもので、(1)「2003年3月までの加入期間:平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」+(2)「2003年4月以降の加入期間:平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で求めることができます。現在の平均給与ベース、かつ簡易的に(2)で計算すると、厚生年金の報酬比例部分は120万円/年程度になります。
今年、70歳になる昭和28年生まれ。男性が4月1日より前の生まれであれば、特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生する60歳の誕生日の3ヵ月前に「年金請求書」が届いていたはず。このとき、きちんと手続きをしていれば、60歳からは年間120万円程度、5年で600万円を受給できたと考えられます。ぎりぎりセーフではなかった……というわけです。
この「もらい忘れの年金は、過去5年分しか請求できない」という原則は、老齢年金のほか、障害年金や遺族年金でも同じこと。もらえるはずのものがもらえないというような、泣くに泣けないミスには気を付けるほかありません。