暴露系動画で炎上する人たちの“共通点”
一方、身勝手に他人を誹謗中傷するケースもあった。これも6月の出来事。女子大生が広州の地下鉄内で農民工(出稼ぎ労働者)に盗撮されたという告発動画を投稿した。
当初は多くの人の同情を集めたが、実はその後、冤罪だったことが発覚しネットが荒れた。彼女は盗撮が勘違いだったと知りながら、後には引けずに動画公開という暴挙に出てしまったようだ。
ここで話題になったのは彼女のバックグラウンド。名門の四川大学に在学中、共産党員に推薦されるほど成績優秀、大手テック系のテンセント(00700)でインターンシップ中、などこれまたキラキラ人生だ。
人一倍優れていると自負するからこそ、社会的立場が弱い出稼ぎ労働者を見下しているのではないか......。このようなやや極端な見方がネット上で広がった。
「党員の役割は人民を助けることなのに、弱者をいじめる側になるとはなんと皮肉な!」との声も出た。
これらの炎上動画で共通するのは、社会的に強い立場にいる人が出てくる点だ。
新型コロナの影響で市民の収入が減少傾向にあるなか、「仇富・仇官」(金持ちと権力者を妬み恨む心理)のような感情が社会全体で高まっている気もする。
まだ貧富の差が大きい中国では、金持ちや権力者の糾弾は回り回って政権批判につながる可能性もある。これを避けようと、いわば自己保身のため、政府は一般市民サイドに立って不祥事を起こした官僚や国有企業幹部を容赦なく処分しているのかもしれない。
本来は娯楽がメインだったショート動画が、社会への不平不満を訴えるツールになっているとも言えよう。
「カネと地位さえあれば何事も堂々とできるのが中国! ただ、今日では大きな代償を払う覚悟がある」
――知人の一言がリアルに響く。
山藤 秋男
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 中国株アナリスト/ストラテジスト
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