昨年の児童手当見直しに伴い、子育て世帯が直面している「年収1,200万円の壁」。子育て世帯にはどのような影響があるのでしょうか。本記事では、CFPの伊藤貴徳氏が、Aさんの事例とともに「年収1,200万円の壁」について解説します。
子2人抱えた40歳夫婦の悲鳴…“年収1,200万円の壁”のエグい正体「なんだか腹が立ってきた」【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

働くほどに援助がなくなる…仕事を抑えて手当を受け取ったほうが得策?

Aさん家族のように、扶養親族が年収103万円以下の配偶者と児童2人で、世帯主の収入が1,200万円以上(各控除を行ったあとの所得が972万円以上)の場合、児童手当は支給停止となります。そのほかの扶養人数に係る限度額は下図のとおりです。

 

内閣府児童手当制度のご案内より抜粋
[図表]扶養人数ごとの児童手当限度額 内閣府児童手当制度のご案内より抜粋

 

この年収1,200万の壁は、仕事を頑張り収入を増やそうとする一方で、働けば働くほど国からのサポートを受けづらくなるという不均衡を生み出す1つの要因となっています。

 

「手当を受け取れるか、受け取れないかの瀬戸際の収入ならば、少し仕事を抑えて手当を受け取ったほうがよい、と考えるのは真っ当だと思います。でも、手当の基準に縛られて働く量を調整するというのも、本来の目的から逸れるようで、違う気がします。なんだか腹が立ってきました」とAさん。

 

家族のために働くという思いは、職業や収入の多寡に関わらず、皆が思うことでしょう。それにも関わらず、頑張って働き、少しでも家族を支えようと思うと、逆に援助がなくなる層があるのも事実です。このような子育て世代のギャップを埋めるべく、令和5年より「異次元の少子化対策」が始まることとなります。

「異次元の少子化対策」による影響

岸田首相は令和5年の年初に「異次元の少子化対策」を提唱し、2030年までが急速に進む少子化に歯止めをかけるラストチャンスと捉え、対策を講じていくと発表しました。令和5年6月「こども未来戦略方針」では、その具体的な政策を「加速化プラン」として下記のように掲げています(一部抜粋)。

 

児童手当の拡充

所得制限を撤廃し、支給期間について高校生年代まで延長する。手当については、第3子以降3万円とする。

 

出産等の経済的負担の軽減

出産・子育て応援交付金(10万円)

出産費用(正常分娩)の保険適用の導入

 

加速化プランの実現は、児童手当の所得制限を撤廃など、子育て世代に対して公平な支援策の1つとなると期待されています。たとえば、児童手当の所得制限が撤廃となった場合、Aさん家族も児童手当を受け取ることができます。

 

異次元の少子化対策により、子育て世代間での均等な支援が期待できるようになりました。ただし、制度の改正を待つばかりでなく、個々の家庭でも対策を講じることも忘れてはいけません。

 

今後、どのタイミングでいくら教育費がかかるか把握することをはじめ、現在の収入に対して支出がいくらとなっているか管理することや、家計の見直し、ライフプランニングなど、自ら準備することも大切です。

 

<出典>

内閣府:児童手当制度のご案内

厚生労働省:こども未来戦略方針

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表