◆「150万円の壁」は対象者が限られる?
まず、「150万円の壁」とは、配偶者控除の「103万円の壁」を超えても、給与収入の額が150万円(所得金額95万円)以下であれば、配偶者控除と同じ最大38万円の所得控除を受けられることを意味します。
ただし、「150万円の壁」を気にする人は事実上、あまりいないと想定されます。
なぜなら、150万円に達する前に、社会保険料の支払い義務に関する「106万円の壁」あるいは「130万円の壁」があるからです。
現状、「106万円の壁」または「130万円の壁」を超えて社会保険料の支払い義務を負うのは構わないが、「150万円の壁」を超えて所得税等の納税義務は負いたくない、と考える人は、事実上ごく少数にとどまるとみられます。
◆税制優遇がなくなる「201万の壁」とは
したがって、問題はもっぱら「201万円の壁」(厳密には「201万6,000円の壁」)ということになります。
「201万円の壁」は、配偶者特別控除の対象となる限度額をいいます。
配偶者特別控除の額は「150万円の壁」(所得金額95万円)を超えると段階的に引き下げられていきます。
そして、年収201万5,999円(所得金額133万円)を超えると、控除が受けられなくなるのです。
最低賃金引き上げで「壁」の問題が浮き彫りに
「年収の壁」については、古くから以下の問題が指摘されてきています。
・「年収の壁」の内側の人と外側の人との間で不公平が生じている
・「年収の壁」が女性の社会進出を阻んでいる
・物価も最低賃金も上昇してきているのに「壁」の額が変わっていない
このうち「女性の社会進出を阻んでいる」という点については、2014年に当時の安倍晋三首相が「女性の就労拡大を抑制する効果をもたらしている」と明言しています(第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議議事要旨P.13参照)。
また、物価や最低賃金の上昇との関係についても、そのたびに「壁」を気にして労働時間を減少させなければならない不合理が指摘されています。特に、老後資金の準備が重要になってきているなか、「壁」により老後資金準備のための経済活動まで抑制されるのであれば、深刻な問題となります。
女性の社会進出が進み、共働き世帯が多数となり、老後資金2,000万円問題等もあるなか、社会保険料、所得税のいずれについても、「年収の壁」の制度の抜本的な見直しが迫られています。
\1月20日(火)ライブ配信/
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