不動産価格は上昇の一途を辿り、東京の新築マンションは1億円超え……サラリーマンで東京に家を持つことができるのは、ほんのひと握りの人たちだけ、といった状況です。しかし東京に家を買うことができた「勝ち組」であっても、ローン破綻という結末を迎えるケースも。みていきましょう。
年収1,200万円のパワーカップル「月20万円の住宅ローン返済も余裕」が一転「返済不能」に陥る2つの理由 (写真はイメージです/PIXTA)

勝ち組夫婦でも「ローン完済」に至らぬ理由とは?

夫婦、二人三脚で東京で新築マンションを買う……もはやパワーカップルだけが実現可能という水準ではありますが、ローンの完済まで走り切れるかは約束されたものではありません。途中でローン返済に行き詰まり、「ローンが返せません!」と悲鳴。それまでの幸せが崩壊し、最悪、ローン破綻という結末を迎えてしまうことも珍しくないのです。

 

パワーカップルでもローン破綻の理由①給与減

夫婦の給与を合わせたうえでの返済プランには「給与減」のリスクが伴います。会社の業績が悪くなったり倒産したりということのほか、自身が病気になり休業や退職を余儀なくされたり。さらにライフステージが進むことによって、親の介護などの問題で、これまで通り働くことができなくなる場合も。

 

仮に前述の7,000万円の新築マンションを夫の給与だけで返済しようとすると、返済負担率は20%から32%跳ねあがり、家計は一気に苦しくなります。逆に妻だけの給与だけで返済しようとする、返済負担率は47%に……あっという間に家計は崩壊します。

 

パワーカップルでもローン破綻の理由②離婚

また、夫婦がいつまでも夫婦であるとはいえません。日本の離婚率は約35%前後。3組に1組の夫婦が離婚しています。二人三脚でマイホームを実現した夫婦は、離婚を機に「自宅を売却」か「住み続ける」かを選択しなければなりません。

 

自宅を売却する場合、物件価格が住宅ローン残債を上回る場合(アンダーローン)は、売却して得た現金でローンを一括返済することができます。一方で、物件価格が住宅ローン残債を下回る場合(オーバーローン)、さらに現金を積み、ローンを返済します。

 

オーバーローンだけど、お金がない場合は通常の流れで売却することはできません。そこで「任意売却」を検討します。これは、住宅ローンを返済できなくなった場合に、オーバーローンであっても金融機関から合意を得て不動産を売却する方法です。任意売却なら、市場価格に近い価格で売却できる可能性があります。住宅ローンの滞納が続き何もできずにいると「競売」へと進むことになります。これは金融機関などの債権者が裁判所に申し立てを行い、債務者から不動産を差し押さえ、強制的に不動産を売却すること。市場価格よりも5~7割程度の価格でしか売れず、その分、ローン残債も多くなるので、任意売却を選択するケースが多いようです。

 

家に住み続ける場合は、大きく「①夫(妻)が住宅ローンを支払って、夫(妻)が住み続ける」「②夫(妻)が住宅ローンを支払って、妻(夫)と子が住み続ける」「③家と住宅ローンの名義を妻(夫)に変えて、妻(夫)が住み続ける」3パターンが考えられます。

 

①の場合、アンダーローンの場合は財産分与の必要がありますが、オーバーローンであれば財産分与の対象外で、家を出ていく妻(夫)には負担はありません。ただし、妻(夫)が連帯保証人の場合、夫(妻)の住宅ローンの支払いが滞ると、妻(夫)に請求が来ます。

 

②の場合もありますが、出ていく夫(妻)の負担が大きく、ローン滞納になりがち。住み続けている妻(夫)はそのことを知らず、いつの間にか自宅が競売になったり、売却されてしまったり。トラブルになりやすく、多くの専門家は「やめておけ」とおすすめしません。

 

住宅ローンの審査に通るだけの十分な収入があるなら、③のパターンも考えられます。しかし特に妻の場合は審査に通りにくいという現状も。また住宅ローンの返済を1人でし続けなければなりません。

 

住宅価格が上昇を続け、夫婦二人三脚でやっとマイホームを実現、という場合、離婚という残念な結果になった際には、①~③、いずれも負担は大きく、売却という選択肢が現実的といえそうです。