厚生労働省から『国民生活基礎調査』2022年調査の結果が発表されました。家族構成をみていくと、時の流れと共に大きく変化していることがわかります。特に増えているのが「65歳以上の高齢者がいる家族」。そこには負担の大きな介護の問題も。みていきましょう。
「一緒に死ぬつもりでした」85歳・認知症の夫を介護、追い込まれた83歳・妻の懺悔…「老老介護」悲惨な実態 (写真はイメージです/PIXTA)

高齢者が高齢者を介護する「老老介護」に体も心も限界

年を重ねていけば、支援や介護が必要になることも珍しくありません。同調査によると、高齢者世帯の61.5%で、要介護等者がいます。要介護になった要因で多いのが、要介護1~3では認知症、要介護4および5では脳卒中でした。

 

そんな介護が必要になった高齢者を介護するのは誰なのでしょうか。主な介護者で最も多いのが「配偶者」で22.9%。次に多いのが「子ども」で16.2%。「事業者」15.7%、「別居の家族等」が11.8%、「子どもの配偶者」が5.4%となっています。

 

高齢化の進展とともに、さまざまな介護サービスが充実してきましたが、それでもメインに介護するのは家族というケースが多く、介護サービスを併用することも当然あるでしょうが、多かれ少なかれ、家族に負担がかかっています。

 

親の介護で気がかりなのが、まずはコスト。介護サービスを利用しているのはおよそ7割で、自己負担額は平均2万8,585円。介護度があがるにつれて当然コストはかさみ、要介護1、2では自己負担額2万円台だったのが、要介護3では4.6万円、要介護4では5.6万円、要介護5では7.5万円と増えていきます。高齢者世帯の平均年金額が月16万円ほどということからすると、年金だけで賄える金額。多くの場合、コストの心配はないようです。

 

ただ介護の現場でいま最大の懸念といっていいのが、老老介護。高齢者が高齢者を介護するというパターンです。

 

75歳以上の要介護者の主な介護者の年齢をみていくと、60歳以上が75.8%、65歳以上が61.2%、そして75歳以上が35.7%。この75歳以上の組み合わせは超老老介護といわれ、3割にものぼっているのです。

 

介護を経験したことのある人なら分かるでしょうが、かなりの重労働。現役世代であってもそう感じるのだから、高齢者ならなおさらです。老老介護では、介護者が精神的にも身体的にも疲労。介護に追われる毎日で、引きこもりがちとなり、社会から孤立。最悪、倒れてしまったり、事件に発展したりすることも。

 

2021年、東北地方で起きた老老介護殺人事件。要介護3、認知機能も低下した85歳の夫の介護をしていた83歳の妻。周囲に相談もできず、「一緒に死ぬつもりだった」と妻が夫を殺害してしまったという、なんとも悲しい事件は大きな注目を集めました。裁判で妻は「私がもっと頑張ればよかった」と語ったそうです。

 

高齢化、さらには長寿化で、介護に関する心配はさらに深刻さを増すでしょう。悲劇を生まないためにも周囲にサポートをお願いすること、また周囲も気にかけることが重要です。前述の事件では子どもたちがあまり親の介護に関与してなかったという事情もあります。

 

また介護サービスを積極的に利用するのもひとつの手。予算に合わせて利用できる老人ホームが増えているので、限界を迎える前に入居を検討するのもいいでしょう。

 

ただ介護サービスを利用するにしても、老人ホームに入居するにも、無料というわけにはいきません。充実した老後をおくるためにも、何よりも大切なのが「お金」です。老後なんて、介護なんて先の先、などと思わずに、現役世代は将来を見据えて早めに資産形成をスタートさせることが重要です。