その日、暮らしていくのもやっと……そんな貧困状態に陥る人には、いくつかのパターンがあります。そのひとつが母子世帯。低収入の傾向が強く、毎月赤字が続く……そのようなケースも珍しくありません。貧困の母子世帯、その実態をみていきましょう。
月収10万円…食べ物さえ買えない、貧困・シングルマザーの壮絶「これで、どう生きていけと」 (写真はイメージです/PIXTA)

母子世帯「20世帯に1世帯」は生活保護を受けている

母子世帯の収入について、もう少し詳しくみていくと、仕事での収入は平均236万円ですが、中央値となると200万円、月換算16万円程度となります。税金など引かれると、手取りは月13万円程度というのが母子世帯のちょうど真ん中です。離婚の場合は、そこに夫からの養育費などがプラスされるわけですが、母子世帯の8割は養育費がない(そもそも養育費の設定さえもしていない場合も含む)といわれています。

 

さらに下位25%となると、仕事での収入は115万円。月収9.5万円と10万円を切ります。母子世帯が約120万世帯ですから、30万世帯ほどは仕事での収入が月10万円以下、という状況です。

 

総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によると、母と子の二人暮らしでは、家賃や光熱費、教育費、交通費などを払っていくと、それだけで10万円。食べ物さえ、買うことができません。

 

――これで、どう生きていけと

 

母子が生きていくのに借金ばかりが膨らんでいくという壮絶なケースも珍しくありません。そんな貧困状態に陥る母子世帯のセーフティネットが「生活保護」。厚生労働省『被保護調査』によると、2023年3月時点、生活保護を受けている母子世帯は6万5,021世帯。母子世帯の20世帯に1世帯は生活保護を受けている計算です。

 

仮に東京都23区に在住、小学生の子どもが2人いたとすると、生活費である生活扶助基準額が12万0,450円。家賃にあたる住宅扶助基準額が6万4,000円。その他、母子加算が2万3,600円、児童養育加算が2万0,380円。合計、生活保護費は22万8,430円。申請・承認されると、ここから、仕事などの収入を引いた分だけ、受け取ることになります。仮に手取り月10万円であれば、月12万円程度の生活保護費を受け取れることになります。

 

生活保護については、換金できる資産を所有していたり、親族の扶養に入ることができたりすると、受けることができません。また親族や元夫に連絡がいったり(離婚原因によっては配慮されます)、ケースワーカーとの定期的な面談があったりと、何かと面倒なことも。

 

また、生活保護によって上記の例では月23万円程度の生活費が保証されるため、

 

――生活保護をもらっている母子家庭のほうが良い暮らしをしている

 

などと、批判の的になることも。生活保護の不正受給率は1%未満といわれていますが、細かな不正が見つかるケースが多くなっていることや、不正受給はごくわずかとはいえ、金額にすると相当額になることから「税金の無駄遣い」ということでバッシングの対象になりやすいのです。

 

このような状況を目の当たりにして、申請を見送るケースも増えているといいます。本当に必要とする人たちに、きちんと支援が行き届くことを願うばかりです。