(※写真はイメージです/PIXTA)

世間一般的に富裕層に分類されるような資産家であっても、老後に生活苦へ陥り、最悪、破綻を迎えるケースがあります。一体なぜなのでしょうか? 本記事では、61歳のAさんの事例とともに富裕層の老後破産についてFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。

父親が急逝、予想外の事態に…

そんななか、施設に入居していたAさんの父親が突然亡くなってしまい、Aさんに「相続」の問題が襲い掛かってきます。葬儀後に調査したAさんの父親の資産状況は次のとおりでした。

 

1.自宅の土地       約1億9,000万円

2.自宅の建物       約3,000万円

3.預貯金等金融資産    約3,000万円

4.生命保険        遺産分割対象外

合計 約2億5,000万円

 

Aさんが驚いたのは土地の価格です。10年ほど前に調べたときに比べると予想以上に高くなっていました。そして、老人ホームの入居費用にかかったのか、金融資産が思ったほどなかったことです。この約2億5,000万円を弟とわけますので、約1億2,500万円ずつになります。

 

そして、相続税額は次のようになります。

 

■財産評価額(相続税)

1.自宅の土地(小規模宅地等の評価減適用後の額)   約3,000万円

2.自宅の建物(固定資産税評価額)          約2,000万円

3.預貯金等金融資産(葬儀費用控除後)        約3,000万円

4.生命保険(課税金額)               約6,000万円

合計 約1億4,000万円

 

相続税額                  1,560万円(相続人2人での納税額)

 

老後資金が一気になくなってしまうAさん

Aさんが困ったのは、相続税の金額ではなく、弟さんとの資産分割です。資産家の場合、財産の多くは一般的に不動産です。不動産は簡単に現金化することができず、分割するのが難しくなっています。

 

Aさんの父親はこの分割のために7,000万円の生命保険に加入したのでした。関西で長いあいだ生活しているAさんの弟さんは東京の不動産に興味はなく、やはり金銭で要求してくるでしょう。

 

生命保険の7,000万円と金融資産の3,000万円で合計は1億円です。残りの2,500万円と相続税の約800万円の合計3,300万円をAさんは用意しなければなりません。悠悠自適と思われたAさんの生活設計は大きく崩れ、このままでは老後破産に陥ります。

 

Aさんは退職から2年近くが経過しており、すでに500万円以上の資産が減っていました。3,300万円の支払いはかなりのダメージで、残りの金融資産は約1,200万円程度になってしまいます。

 

祖父の代から守ってきた家を手放す可能性も…

固定資産税等だけでも30年先までは合計で2,000万円超を払っていかなくてはいけません。65歳から受け取れるAさんの年金予定額の月額は約20万円ですが、とても家を持ち続ける余裕など完全になくなってしまいました。

 

「私は父親のように息子達のために多額の保険に加入できるほどの余裕などはありません。自分の老後の生活と将来の相続のことを考えると、自宅は手放さないといけないのかな、と思います。いまはなにも考えられない状況ですが、妻とは、数年後には夫婦で入居できる老人ホームにでも入ろうか、と話し合っています」

 

Aさんのように特定の相続人が土地などの現物の財産を相続する代わりに、ほかの相続人に対し現金などを支払う方法を「代償分割」といいます。相続税では、宅地には「小規模宅地等の特例」の適用を受けることができ、自宅敷地の評価が80%減額されることで相続税額が軽減されます。

 

ですから、代償分割では、この小規模宅地等の特例の適用を受けることができますので、相続税の軽減に非常に有効です。しかしながら代償分割は、Aさんのように不動産を受け継いだ相続人は、他の相続人に対して支払うべき現金(代償金)を用意しなければならない、という負担があります。

 

困ったAさんは、筆者にアドバイスを求めてきました。

 

 

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※プライバシーを考慮し、実際の相談内容から一部変更しています。

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