3ヵ月で決断が必要…「相続放棄」検討時のポイントは?
相続放棄とは、相続人が亡くなった方の権利義務の承継を拒否する意思表示のことを指します。プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合は、相続放棄をしたほうがいいといえます。
相続放棄をする場合、相続が開始したことを知ってから3ヵ月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。これが受理されることによって、相続放棄が認められることになります。
相続放棄をしたあとは、最初から相続人ではなかったものとみなされるため、遺産分割協議等には当然参加しません。
相続放棄手続きは選択期間が3ヵ月ととても短いため、注意点も多く存在します。具体例をもとにみていきましょう。
遺産分割協議参加後は、原則「相続放棄不可能」
帰省の流れで遺産分割協議に参加後、父の「1,200万円」の借金が発覚
都内の中堅IT企業で働くXさん(35歳)。3歳年下の妻と2歳になる子どもが1人います。地元は九州で、63歳の父親は飲食店を経営していました。
その父親が亡くなったという報せを受けたため、Xさんは一時的に帰省。葬儀のあと相続の話になったため、そのまま遺産分割協議に参加しました。
財産を相続することで話をまとめたものの、後日父が営んでいた事業の借金1,200万円の返済を求める書面が届いてしまいました。
このように、「もし被相続人に個人的な借金があると知っていれば相続しなかった」という事例の場合、どうしたらいいのでしょうか。
こういったケースは、筆者が司法書士として実務をやっているなかでもよくある話です。「相続をしたものの借金のことなど知らなかった」「知っていれば絶対に相続放棄していた」といったご相談をよくいただきます。
遺産分割協議というのは、自分が法律上の相続人であること認めたうえで行うものになるため、原則遺産分割協議に参加したあとは相続放棄することができません。
遺産分割協議後、相続放棄が受理された事例もあるものの…
例外として、今回の事例のように、「相続人が被相続人に借金がないと信じて遺産分割協議をした」「もし多額の借金の存在を知っていたら相続放棄していたであろう」と考えられ、かつ細かな条件に合致していれば、相続人が借金の存在を知ってから3ヵ月以内に相続放棄の申述をした場合は受理すべきであると判事した裁判例も存在します。
ただし、この「細かな条件」というのは相当ハードルが高く、類似ケースでも却下となっているケースもたくさんあります。
したがって、原則としては先述のとおり、遺産分割協議に参加してしまったらそのあと相続放棄はできないと考えていただきたいです。
父親が亡くなったと知り帰省し、その流れで遺産の話し合いに参加するケースはよくありますが、ぜひ相続放棄にはこういった注意点があるということを知っておいていただければと思います。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>