管理職の採用で「保育業界」に転職した須藤慎太郎さん48歳。異業種であったことから、年収は800万円から520万円にダウン、手取りは400万円ほどです。そんな須藤さんが転職先で体験した「地獄」について、『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が紹介します。行政も手を出せない「保育業界の闇」をみていきましょう。
転職で「年収800万円→年収520万円」の48歳・会社員…“まっとうな正義感”がもたらした悲惨すぎる末路【ジャーナリストの告発】 ※画像はイメージです/PIXTA

「補助金の不正受給」に気づいた須藤さんの末路

補助金申請のエクセルを打っていて、どうも数字が合わなくて。それを上司に相談したら、「データを合わせろ」と命令されたんですよね。

 

これ、補助金の不正請求だろうなとピンときたんです。だから、前任者にヒアリングしていたら、「部署を越えた越権行為だ」「情報漏洩だ」と言われてしまいました。それで労組に相談したら、懲戒処分を受けたんです。

 

人事面接では社長はいつも、僕たち管理部門も含めて保育士の待遇もよくすると言うんですが、ハッキリ言って、「するする詐欺」ですよ。社長の〝お気に入り〟は給与が高くて、そうでないといつまでも収入が増えない。

 

人事評価制度がちゃんと機能していなくて、客観的な評価がどうだったのかも分からないんです。社長に何か苦言を呈するだけで造反したと見られて、懲戒処分を受けて排除されるんです。

 

これは保育園の園長も同じです。次々に保育園を増やしているので、一定の規模になると行政も潰せなくなるのではないでしょうか。大手・中堅なら、もちろん政治家にロビー活動もしているはずです。

 

そういうコネや資金力があれば、不正を行っても「じゃあ、いいよ。明日から保育園を全部閉めるから」と役所に強く出たら、行政は手も足も出なくなるんです。売上高が10億円を超えたあたりから、そういうケースが多くなってくるんじゃないかな。

善意だけで現場がもっている

保育園の現場を見たら、質が低すぎてびっくりすると思いますよ。残念な経営陣が残念な保育環境を作っているんですから。保育士が可哀想ですよ。うちの会社は賃金が低いし、人手もギリギリ。残業しても残業代は出ないのですから。

園長クラスはすぐそれに気づいて、「会社に何も求めない。子どもたちの笑顔だけ」と言っていて、もう、本当に善意だけで現場がもっていると痛感しました。とにかく現場は大事にされないから、それもすぐ限界がきて保育士も園長もすぐ辞めていくんです。社長が優先するのは会社の規模拡大、それだけ。