最近やたらと目につく「老害」という文字。「あの老害上司め!」などと口にした経験がある人も多いのでは。なぜ、目上の上司にそう感じてしまうのか。そこには上司の働きと給与にあるようで……みていきましょう。
「老害は早く辞めてほしい」…月収33万円・大企業勤務の30代サラリーマンが断罪する、働きの悪い50代上司の「給与額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

労働生産性「40代で一気に上がる」が「50代」では…

上司の言葉に対する、何ともいえない違和感。それはいつの時代でも部下が上司に感じていたものに違いありません。しかしそれが「老害」と表現するようになったのは、「あの人、仕事してないのに口先ばかり」とか「仕事もろくにしてないのに、給与ばかりが高い」というようなことがバレてしまったからかもしれません。

 

少々古い資料ですが、内閣府『日本経済2015-2016』に「年齢別労働生産性」というトピックスがあります。それによると、20代と30代ではそれほど労働生産性に違いはありませんが、40代では一気に高まります。そのまま伸びていけばいいのですが、50代に入ると一気にダウン。50代後半でも、40代ほどのパフォーマンスは発揮されていません。さらに60歳を超えると、20代や30代と同じような生産性しか発揮できなくなります(図表)

 

【図表】年齢別労働生産性
【図表】年齢別労働生産性

 

40代といえば、中間管理職という人も多く、上と下の板挟みとなり苦しい時期。しかし労働生産性はキャリアのなかでも高く、組織への貢献度も高いといえます。この年齢の上司から怒られることがあっても、「仕方がないか……」と飲み込むことができそうです。

 

しかし50代から怒られたらどうでしょう。「たいした仕事もしてないくせに……」という思いが先に立ち、怒られても単に「老害」と片づけてしまうのではないでしょうか。さらに定年を迎え再雇用で非正規社員になる人も多い60代から何かいわれたものなら「何を上から目線でいってんだよ」と悪態をついてしまいそうです。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』で、大企業(従業員1,000人以上)勤務のサラリーマンの給与事情をみていくと、20代後半では月30万円にあと一歩、30代後半では月40万円まであと一歩といったところ。一方で50代前半では月49.7万円、賞与も含めた年収は863万円。50代後半には月50.6万円、年収868万円と、会社員人生史上、ピークに達します。

 

【年齢別・大企業勤務サラリーマンの給与】

20~24歳:229,400円/3,743,200円

25~29歳:279,800円/5,006,100円

30~34歳:332,600円/5,976,200円

35~39歳:390,600円/6,957,500円

40~44歳:425,400円/7,472,500円

45~49歳:463,000円/8,018,800円

50~54歳:497,600円/8,634,900円

55~59歳:506,600円/8,688,600円

60~64歳:409,100円/6,716,100円

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』

※数値左:月収(所定内給与額)、右:年収

 

もし給与差だけの生産性があり、それが目に見えていれば「しっくりこないけど、あの人がいっているのなら……」となるのでしょう。しかし実際のパフォーマンスは、40代の部下より格段に劣り、20代、30代の給与差ほどのものは感じられない……そうなるとSNSでよく呟かれているとおり、「老害は早く辞めてほしい」と陰口を叩かれても仕方がありません。

 

50代、定年まであとわずか。「あとは定年まで給与をもらえたらいいか」と余裕を醸し出している人もいるのではないでしょうか。その姿勢、部下はすべてをお見通しかもしれません。