一時期あらゆるメディアで盛んに報じられた「老後2,000万円問題」。1度は耳目に触れたことがあるのではないでしょうか。株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役の山中伸枝ファイナンシャルプランナーのところにも「老後に2,000万円も必要なんですか?」と青い顔をして相談に訪れるシニアが後を絶たないといいます。 今回はそのなかの1人、53歳の藤田さん(仮名)の事例とともに、老後本当に必要な資金額やその考え方についてみていきましょう。
大事なのは「若い方の人数」ではなく「働く方の人数」
しかし、ここには大きな誤解があります。たしかに、65歳という年齢で区切って人口を比較すると、支え手がどんどん減っていくなかで負担ばかりが増えるように思えます。しかし、実際年金制度というのは、「保険料を負担する方」と「年金を受給する方」とのバランスが取れていれば問題ありません。
すると大事なのは、保険料を負担する方たち、つまり「働く方」の人数です。
しかし、この就業者数を比較すると、実は年金制度が始まった1970年代から、今もあまり変化がないといわれています。女性や高齢者の就労が進んだことで、むしろ働く人口は増えていますから、年金制度において賦課方式を不安視する必要はありません。
また、「賦課方式」ですから、入ってくる保険料のなかから支払給付が調整されるため、保険料の支払がなくならない限り給付もなくなりません。さらに、保険料以上には給付できないため、現在では「マクロ経済スライド」といって、給付額を調整する機能も加わっています。
したがって、年金額の上昇が若干物価の上昇に遅れることは想定し対策を立てるべきですが、年金制度は持続可能ですし、将来的にも枯渇することなく維持されると理解するべきでしょう。
斉藤様は、「重要なのは少子高齢化ではなく働く方の人数だ」ということをはじめて知り、驚いた様子でした。
年金制度の誤解2.「年金は早死にすると損」
しかし、まだまだ斉藤様の年金へ対する不満は止まりません。
「たしかに“年金が終身”というのはありがたいし、持続可能ということでひとまずは安心しました。
でも、個人ベースで考えれば、長生きできてようやく保険料分を回収できるって話で、早死にしたらやっぱり損じゃないですか。
僕らの年代は、昔に比べて添加物も多く摂っているから、今の高齢者みたいに長生きできないかもなんて話もあるし、それで年金の受け取り年齢がどんどん引き上げられ、もらえるものももらえないなんてやっぱり納得できませんね」と語気を荒げます。
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株式会社アセット・アドバンテージ
代表取締役
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーを目指す。
2002年にファイナンシャルプランナーの初級資格AFPを、2004年に同国際資格であるCFP資格を取得した後、どこの金融機関にも属さない、中立公正な独立系FPとしての活動を開始。金融機関や企業からの講演依頼の他、マネーコラムの執筆や書籍の執筆も多数。
個人相談も多く手がけ、年金、ライフプラン、資産運用を特に強みとしており、具体的なソリューション提供をモットーとする。
著書に、『「なんとかなる」ではどうにもならない定年後のお金の教科書』(クロスメディア・パブリッシング)、『ど素人が始めるiDeCoの本』(翔泳社)、『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東京経済新報社)、『会社も従業員もトクをする! 中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版)などがある。
●確定拠出年金の相談ができる全国のFPネットワーク
「FP相談ねっと」代表
https://fpsdn.net/
●公的保険のプロアドバイザーを育成する
「一般社団法人 公的保険アドバイザー協会」理事
https://siaa.or.jp/
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