日本人の平均年収は1990年代からおよそ30年間、400万円代で推移しており、直近の平均年収である443万円は、1992年の455万円すら下回っています(国税庁統計による)。では、日本がこうした悲惨な現状に陥っている背景にはなにがあったのでしょうか。『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏が解説します。
日本企業「“非正規社員”を増やして利益を出します」の末路…年収443万円で「生活が苦しい」国民の悲惨【ジャーナリストの告発】 ※画像はイメージです/PIXTA

平均年収443万円もらっても「生活が苦しい」この国の未来とは…

それ以降、この問題を追っているが、何かが大きく変わったわけではない。むしろ、OECD(経済協力開発機構)加盟諸国から置いてきぼりになり、日本の賃金は伸び悩んでいる。

 

国はそのたびに企業の論理を優先させ、人件費を抑制できるような労働法制の規制緩和を行って、真の問題に向き合ってこなかった。

 

雇用や生活が破壊される背景には、法律や制度の構造問題がある。就職氷河期の当事者でもあり非正規雇用を経験した筆者が、同世代の雇用問題を追って約20年……。事態は良くなるどころか、ますます悪化している。

 

「平均年収でも生活が崩れてしまう」という現実がもたらす未来は、どんな世界になるのだろうか。私たちは今、どんな社会で生きているのだろうか。平均年収前後の生活の今を知ることから、これから何を問い直さなければならないかを考えることが求められる。

 

 

小林 美希

ジャーナリスト