国税庁の民間給与実態統計調査によると、2021年の給与所得者の平均年収は443万円でした。「年収が400万円もあったら、安心して暮らしていける」との声は多いものの、現実は違うと、『年収443万円』(講談社現代新書)著者でジャーナリストの小林美希氏はいいます。世帯年収1,000万円でも節約の日々……思わず目を背けたくなる「安すぎる国・ニッポン」の実態をみていきましょう。
世帯年収1,000万円の30代女性「昼食は220円のサンドイッチだけ」…平均年収443万円「安すぎる国・ニッポン」の実態【ジャーナリストが紹介】 ※画像はイメージです/PIXTA

「年収443万円」は安定か、絶望か

年収443万円——。

 

これは、1年を通じて働いたこの国の給与所得者の平均年収の金額だ。国税庁が毎年発表する「民間給与実態統計調査」では、2021年の給与所得者の平均年収が443万円で、平均年齢は46.9歳だった。この年齢は、ちょうど就職氷河期世代と重なる。

 

[図表]平均年収の推移
[図表]平均年収の推移

 

正社員と正社員以外それぞれの平均年収を見ると、正社員は508万円、正社員以外は198万円だった。就職氷河期世代を中心に広がった非正規雇用で働く側からすれば、平均年収443万円は、夢のまた夢だ。

 

「中間層」が崩壊するなか、正社員以外からの「年収が400万円もあったら、安心して暮らしていける」との声は多い。しかし、現実はちょっと違うようだ。

 

443万円は「平均値」…「中央値」はもっと低い

平均年収443万円というのは、あくまで平均値。中央値は思いのほか低い。年収の分布を見ると、最も多いのが「300万円超400万円以下」で、全体の17・4%を占めている。

 

3番目に多いのが「200万円超300万円以下」の14・8%で、3人に1人が200万~400万円の間の収入となる。ここ何年も、その傾向は変わっていない。それに加え、働き盛りの男性の収入は減っている。

 

国税庁の調査から、金融不安が起こった1997年と直近データである2021年の40代男性の年収を比べてみたい。

 

40~44歳では645万円から584万円となって年間61万円減、45~49歳も695万円から630万円になって年間65万円減っている。さらに、社会保険料の引き上げなどによって可処分所得も減少。物価は上昇している。もらえる年金は先細りが予想され、老後の資金が何千万円も必要かもしれない。

 

そうした状況のなか、平均年収であることで、どんな生活ができるのだろうか。平均年収で暮らす就職氷河期世代の取材を進めると、日々、節約に励んでいる。