世帯年収1,600万円のN夫妻。お金や暮らしに関わることはなんでも話し合って決めるなど、良好な夫婦関係を築いてきました。しかし、妻が「怪しい言動」を繰り返すようになって、急展開。夫婦は深刻な家計破綻危機に陥ってしまったのです……。いったいなにがあったのでしょうか。長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
「世帯年収1,600万円・30代勝ち組夫婦」の転落劇…住宅ローン月7.7万円を払えず貯金4,000万円はパー、多額債務者へ落ちたワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

督促の封筒が何通も…判明した「2つの衝撃事実」

Nさんの「悪い予感」は的中していたようです。それから数日後、銀行から電話があり、妻が住宅ローンの返済を3ヵ月連続で滞納していることがわかりました。ペアローンの場合はお互いが連帯保証人となるため、Nさんに今後一括返済の義務が生じるかもしれません。

 

それどころか、最近自宅には差出人が「事務センター」などと書かれた封筒が頻繁に届いています。夫婦とはいえ中身を見てはいけない、一瞬そう思いましたがあまりにも量が多く、妻が外出している隙に思い切って封を開けてみました。すると、消費者金融の督促状が入っていました。数ヵ月間返済をしていないらしく、一括返済を求められています。これと同じような内容の封筒が何通も……。生命保険や自動車保険の失効の通知もありました。

 

さらに同じ日、突然インターフォンが鳴り、中年の男女がすごい剣幕で自宅を訪問してきました。開口一番、強い口調で「Rさんに騙された、お金を返してほしい」と言います。妻のRさんは債務不履行だけではなく、人間関係でもトラブルを抱えていることがわかってきました。

 

Nさんはついに頭を抱え、奥さんに本当のことを聞こうと思いました。こうなってしまったのは、日頃コミュニケーションを怠っていた自分の責任もあります。

 

メッセージアプリで連絡してみましたが、返事はありません。妻の番号に電話をかけてみると、「お客様のご都合によりお繋ぎできません」というアナウンス。携帯料金も支払えていないようです。

 

覚悟を決め、妻の職場に電話を入れてみました。すると妻の上司から驚きの答えが返ってきます。

 

「あの、奥様は先々月、退職しましたが……」

 

以前の妻であれば、こんな行動は絶対にしないはずです。結婚当初はスマホの機種変更すらお互いに話し合ってから行い、銀行口座の通帳やハンコも共有の金庫に保管していた2人。

 

電話を切り、嫌な予感がしたNさんは、すぐに銀行に向かいました。手元の通帳には4,000万円の残高が印字されていますが、長い間記帳できていなかったのです。

 

ATMに着き、受入口から出てきた通帳を見て、Nさんががっくり肩を落としたのはいうまでもありません。Nさんの口座残高は、わずか数百円しかありませんでした。

 

家はどうなるんだろう。今後の人生はどうなっていくのだろう……。不安に駆られたNさんは、筆者のFP事務所に相談に訪れました。