東京都と地方の平均年収差は「約223万円」…広がる格差
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』における都道府県別の平均賃金から、平均年収を推測することができます。
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45位 宮崎県 383万1,300円
46位 青森県 380万1,600円
47位 沖縄県 375万4,200円
1位の東京都と47位の沖縄県との差は約223万円。当然ながら10年間で2,000万円以上、20年間で4,000万円以上の年収差が存在するということになります。一方で、ブランド総合研究所「都道府県魅力度ランキング2022」によると、平均年収が下位だった3県の魅力度は上位にランクインしています。
青森県 19位
沖縄県 3位
これらの3県には自然が豊かで住みやすいという、都会にはない魅力をイメージしやすいと思います。Uターン移住を希望している人も増えていて、自治体も移住受け入れに力を入れています。満員電車に揺られて出勤し競争社会のなかで生き残る生活に閉塞感を覚えたという人達が、「自然に囲まれた豊かな暮らし」「安い物価」「年収が下がったとしても人間的な暮らしができる」などという理想を描いて移住を考えているようです。
しかし、その理想は現実的なものでしょうか。急激な物価高が進む現在、地方都市へのUターン移住は家計にどのような影響をおよぼすのか、事例を交えて解説していきます。
世帯年収1,050万円・青森県出身の30代夫婦…Uターン移住を決断
Nさんは33歳の会社員です。青森県の出身で東京都内の大学に進学、卒業後そのまま都内の企業に就職しました。同じ年のKさんと知り合ったのは28歳のとき。看護師をしているKさんもまた青森県の出身でした。29歳で結婚した当初は、夫の年収は520万円、妻の年収は500万円でした。世帯年収で1,020万円と決して多くはないものの不自由を感じない生活ができていました。
しかし夫のNさんは仕事のストレスから、軽度のメンタル不調に陥ってしまいます。一方で妻のKさんも日々の深夜勤務に疲れていました。2人で故郷に戻り転職してやり直したいという思いが強くなり、31歳のときにUターン移住・転職を実行しました。
Uターン移住先で転職、住宅購入を計画するも…
青森県で夫のNさんが就職したのが地元の中小企業。年収は360万円です。妻のKさんは夜勤のないクリニックに就職。年収は340万円となりました。世帯年収は700万円。以前の7割ほどに減少しましたが、Nさんのメンタル不調は劇的に改善しました。故郷で暮らせる安心感ゆえでしょうか。Nさん夫婦は次第にマイホーム購入を考え始めます。
「田舎だし土地は安い。郊外の安い土地に大きな家を建てて暮らしたい……」
夫婦でそう願うようになったのです。住宅メーカーの展示場を訪れると、対応した営業マンが2人の年収を聞いて機嫌よく答えました。
「この年収であれば、まったく問題がなく住宅ローンを借りられるでしょう」
それを聞いてNさん夫婦は大喜びしました。資金計画は4,500万円。土地の広さは90坪、建物は延床面積40坪という立派な注文住宅です。
「毎月の返済額は119,200円(35年返済、金利0.65%)、年収に対する返済負担率は20.4%なので問題はないですよ」と住宅営業マンはいいます。
少し高いかなと不安に思ったNさん夫婦に、営業マンがFPを紹介してくれました。保険会社の営業マンでしたが親切に相談に乗ってくれて、こういいました。
「この地方で世帯年収700万円は多いほうですよ。安心して買っていいと思います」
ほっと胸を撫でおろしたNさん夫婦は、契約することを前提で住宅メーカーと打ち合わせを始めました。ところが、FPにお墨付きをもらった気分の夫のNさんは、次第に建物に対する希望が膨らんでいきます。趣味のための書斎が欲しい、敷地にガレージを作りたい、平屋にしたほうがかっこいいのではないか、建物を50坪くらいに大きくしたらどうだろうか……。
当然ながら予算は急上昇していき、5,000万円を超えてしまいました。気持ちが高揚している夫のNさんをよそに、妻のKさんは強い不安に駆られ、以前紹介されたFPとは違うFP事務所に相談し直そうと思ったのです。