世帯年収1,600万円のN夫妻。お金や暮らしに関わることはなんでも話し合って決めるなど、良好な夫婦関係を築いてきました。しかし、妻が「怪しい言動」を繰り返すようになって、急展開。夫婦は深刻な家計破綻危機に陥ってしまったのです……。いったいなにがあったのでしょうか。長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
「世帯年収1,600万円・30代勝ち組夫婦」の転落劇…住宅ローン月7.7万円を払えず貯金4,000万円はパー、多額債務者へ落ちたワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

高級車、ホームパーティ…怪しすぎる妻の行動

ある土曜日、妻が「仕事仲間とホームパーティをやる」と言うので、Nさんはそのあいだ外に出かけることにしました。「一緒にいたらいいのに」と妻は言いましたが、妻の勤務先の方々に気を遣わせてしまうだろうと思ったのです。

 

カフェで半日仕事をして家に帰ってみると、まだホームパーティは続いているようです。Nさんはこっそりドアを開け、驚きました。玄関には、予想を遥かに超えた大量の靴があります。30人程度はいるようです。

 

リビングにはさまざまな年齢の男女がひしめいていて、Nさんを見つけるやいなや、そのうちの何人かが不自然なほど明るく挨拶をしてきました。声も表情も一様に明るいのですが、目の奥が暗い人ばかりで、Nさんはゾッとしました。近頃の妻も、この人たちと同じ目つきをしていると気がついたのです。

 

そのとき、妻から「おかえり。こちら、お世話になっているOOさん」とある男性を紹介されました。不自然に日焼けをしていて、服装がおかしな人です。

 

40代~50代のようですが、偏見ながらサラリーマンなどには見えません。紹介された男性は、取ってつけたような笑顔で「毎日サーフィンをしながら、ときどき“ビジネス”をしているんです」と言いました。

 

やがてパーティが終わり、来客が全員帰ったあと、Nさんは妻に「あの人たちとはどんな関係なの」と尋ねました。「言ったじゃない。ビジネス関係の人よ」と妻は答えます。

 

ビジネス……? 先ほども聞いた言葉です。「仕事仲間」と聞いていたNさんはてっきり妻の勤務先の人が来るだろうと思っていましたが、どうやらまったく違う様子。「これはただごとではない」Nさんはそう思いました。

 

“それ、ネットワークビジネスってやつだよ”

翌日、職場の上司にホームパーティの様子や妻の最近の変化について相談してみたところ、50代の上司はピンと来たようでした。

 

「それ、ネットワークビジネスってやつだよ。90年代に若い人たちを中心に流行した、いわゆる“マルチ商法”と呼ばれるものだね」

 

「ネットワークビジネス? 違法なやつですか?」

 

「違法ではないけれど、人を勧誘して商品を買わせると上位会員が儲かるという仕組みで、何度も社会問題になったことがある。被害を訴える人も昔はたくさんいた。自分は成功者だと見栄を張って着飾り、いい車を自慢して、仲間を勧誘するんだよ」

 

Nさんは、妻の高級輸入車が頭に浮かびました。

 

上司は心配そうに言います。「奥さんと話をしてすぐに辞めさせたほうがいい。住宅ローンもあるというのに心配だよ。それにしても……いまどきまだあるんだな」