独身おじさんに「老後の備えは意味がない」というワケ
大卒で平均的な給与を手にしていたなら、年金だけで生活はできそう。しかし年を重ねていくうちに、「支援・介護が必要になっても、身近に頼る人がいない」「孤独死など、万が一のことが起きても、誰も気づいてくれない孤独死して誰にも気づいてもらえない」といった、介護や孤独死に対する不安が大きくなるでしょう。
そんな不安を解決する方法のひとつが、老人ホームへの入居。自立型老人ホームであれば、介護が必要のない高齢者が入居できる施設。食事などの生活支援サービスが受けられ、イメージとしては高齢者に限定したサービスアパートメント。見守りサービスがあれば、孤独死の心配もありません。
介護が必要になったら退去する必要がありますが、通常、連携する施設があり、連携もスムーズ。ネックになるのがコスト。入居金は0~数億円、月額費用は10万~40万円ほど。ほかの老人ホームに比べると高めではあるものの、単身者の老後の不安が解消できると考えると、安いものかもしれません。
そんな老後を見据えて、では50歳から資産形成を本格化しようとする、未婚の独身サラリーマン。しかし「そんなこと、無駄だからやめておけ」という外野の声が。
――だって、独り身だったら、そんなに長生きしないし
どういうことでしょう。厚生労働省『人口動態調査』(2021年)によると、男性の寿命の中央値は82歳。配偶関係でみていくと、配偶者ありは同じく82歳。一方で配偶者なしの未婚者は67歳と、圧倒的に若いのが特長です。つまり、「単身者の半数は67歳を前に死んでしまう」ということ。これでは、確かに「老後に備えなさい」という世の中の論調は、ただ悲しく聞こえてくるに違いありません。
――えっ、老後の備えって、私たちには無意味ということ!?
未婚男性の主な死因をみていくと、最も多いのが「悪性新生物」で23.1%。有配偶者の男性の死因トップも「悪性新生物」ですが、未婚男性よりも10ポイント以上も高くなっています。その要因として考えられるのが、有配偶者のほうが寿命が長いから。一般的に「悪性新生物」は高齢になるほど罹患率は上がり、必然的に「悪性新生物」で亡くなる人は増加するのです。一方で、未婚男性の死因で有配偶者よりも多いのが「自殺」。未婚男性の死因の6.8%を占め、有配偶者よりも5ポイント以上も高くなっています。自死に追い込まれる理由はさまざまですが、そんな状況に追い込まれる人が、未婚者のほうが多いというのは間違いのない事実です。
未婚男性の寿命の中央値は67歳。この数値を根拠に「老後の備えは無意味」というのはあまりに早計。未婚者の半数は67歳を超えて生きていくわけですから、備えなしで老後に突入はあまりに危険です。未婚者であっても、用意周到な老後の備え以外に、老後不安を解消する術はないといえるでしょう。