生活に困窮した方が生活保護申請をためらう大きな要因の一つは、親・きょうだい・成人した子等の親族への「扶養照会」です。しかし、事情によっては不要となることがあります。10,000件以上の生活保護申請サポートを行ってきた特定行政書士の三木ひとみ氏が、著書『わたし生活保護を受けられますかー全国10,000件申請サポートの特定行政書士が事例で解説 申請から決定まで』(ペンコム)から実例をもとに解説します。
生活保護は「親族に扶養照会しないと申請できない」はウソ!“知られたくない親族”に知られずに受給する「有効な方法」【特定行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

扶養照会は、生活保護を利用するための最大の障壁

扶養照会とは、生活保護の申請を受けた自治体が、親族の経済的な状況などを聞き取り、生活保護申請をした人への経済的な援助などができないかを親族に問い合わせることで、生活保護を利用するための最大の障壁となっていると言っても過言ではないほどです。

 

「きょうだいには生活保護のことを知られたくないけれど、それでも生活保護を受けられますか?」

 

「絶対に家族に役所から連絡されては困ります!」

 

「生活保護を申請したら、親に連絡が行きますよね?」

 

こうした相談は行政書士として最も多く受けるものであり、扶養照会の相談、質問を受けなかった日というのは、私が生活保護行政にかかわるようになってから1日たりともなかったように思います。

 

法令上、扶養照会しなくていいのは限られた場合のみだが…「音信不通」の場合の運用は?

扶養照会について、厚生労働省は、これまで20年間音信不通の場合には親族に照会しなくていいとされていた運用を、10年程度とする通知を自治体向けに出しました(2021年2月26日付)。

 

それ以前は、親族からDVや虐待を受けていたり、20年以上連絡を取っていなかったりと限られた場合にのみ、扶養照会はしなくてよいと生活保護制度運用の法令上されていたのです。

 

つまり、三権分立に基づき、法にのっとった仕事をしなければならない福祉事務所の窓口の職員は、親族からの暴力など差し迫る危険がなく、直近20年で連絡を取っている親族については、扶養照会をするというのが、自らがしなければいけない仕事、職責だと言えます。