生活に困窮した方が生活保護申請をためらう大きな要因の一つは、親・きょうだい・成人した子等の親族への「扶養照会」です。しかし、事情によっては不要となることがあります。10,000件以上の生活保護申請サポートを行ってきた特定行政書士の三木ひとみ氏が、著書『わたし生活保護を受けられますかー全国10,000件申請サポートの特定行政書士が事例で解説 申請から決定まで』(ペンコム)から実例をもとに解説します。
生活保護は「親族に扶養照会しないと申請できない」はウソ!“知られたくない親族”に知られずに受給する「有効な方法」【特定行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

たびたび問題になる「扶養照会」の強行ケース

この扶養照会緩和の通達がされた後にも、「10年以内に連絡を取っていたのだから、本人が拒絶しても扶養照会はします」

 

と強行しようとした、2021年7月の東京都杉並区のケースがメディアで報道され話題になりました。

 

このケースでは、杉並区に扶養照会を実施しないことを書面で求める申出書を生活保護申請時に提出しようとしたところ、「申出書を出すなら生活保護申請手続きは進められない」と言われ、やむなく扶養照会を拒む申出書の提出を断念したところ、本人の意に反して扶養照会が強行されてしまった、というものです。

 

親族への扶養照会をしないでほしい理由を明記した申請書を提出

多くの人は、役所の職員から言われたことは言葉通りに受け止めるしか術がありません。

 

しかし、現実には、生活保護を申請する人には個別にさまざまな配慮すべき事情があるので、福祉事務所は臨機応変にこれまでも対応することはできました。

 

行政書士として私が生活保護申請書を作成する際、依頼者の希望で、親族への扶養照会をしないでほしいという要請を記載することは多々あります。

 

実際そうした理由を明記した申請書を提出、受理されたケースで申請者の意に反した扶養照会が勝手になされたことは行政書士の私の知る限り1つもありません。

 

行政書士の私が申請書を作成するときは、扶養照会を拒絶する申出書ではなく、申請書そのものに、

 

『扶養親族である姉には心配をかけたくないので、生活保護申請のことを絶対に知られたくありません。家族の関係性が壊れないように、また私の最低生活が守られるように、私の意に反して扶養照会をすることは絶対にやめてください。姉の個人情報は一切開示できませんし、私の個人情報も姉に絶対に開示しないでください。行政から姉に文書を送るようなことも、絶対にしないでください。』

 

などと、文言はケースバイケースでさまざまに変えていますが、こうした扶養照会を拒む明確な文言を入れます。