「専業主婦は優遇されすぎ」と、不公平感を訴える声が後を絶ちません。なぜなのでしょうか? 年金制度の基本とともに、批判の原因を探っていきましょう。
専業主婦から吸い上げろ!年収680万円のサラリーマンが震える「第3号廃止」の現実味…政府「1兆円超えの財源確保」の皮算用 (※写真はイメージです/PIXTA)

「第3号被保険者制度廃止論」が活発化しているが…

日本の年金制度を簡単にいえば、年金そのものは大きく2つあり、どの年金制度に加入するかは3つに分類されるということになるでしょう。

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、公的年金被保険者数は、令和3年度末現在で6,729万人。国民年金の第1号被保険者数(任意加入被保険者を含む)は、令和3年度末現在で1,431万人、厚生年金被保険者数は4,535万人、国民年金の第3号被保険者数は763万人。女性の社会進出や非正規社員の厚生年金加入などにより、第1号、第3号は減少傾向にある一方で、第2号被保険者数は増加傾向にあります。

 

そんななか、批判の対象になっているのが「第3号被保険者」、つまり専業主婦(夫)です。そもそも日本人であれば誰もが国民年金保険料を払わなければなりませんが、専業主婦(夫)は払っていません。第3号被保険者の国民年金保険料は、第2号被保険者の配偶者が属している保険者が負担。扶養される配偶者が第3号被保険者である間は、保険料を払っていなくても納付済期間としてカウントされるわけです。仮に20歳から60歳までの40年間専業主婦だったなら、1円も保険料を払っていないのにも関わらず、国民基礎年金は満額支給となります。

 

同じ専業主婦(夫)でも、第1号被保険者の配偶者の場合は、国民年金保険料を払わないといけません。確かにそこには不公平感があります。働いている女性と、専業主婦で保険料格差がある点も批判の的になっています。

 

「専業主婦優遇とも揶揄される第3号被保険者は廃止しよう」という動きは国・政府の間にもあり、『2014年11月4日第27回社会保障審議会年金部会』の資料には、「第3号被保険者制度をやめることについては異論がないと思うが……」という記述があり、随分と前から議論の対象とされてきました。廃止はしないまでも、第3号被保険者は国民健康保険料の半額は負担すべき、などという意見も上がっています。

 

仮に前述のとおり、763万人が月額1万6,520円の保険料を払うようになったとしたら……単純計算、1兆5,125億7,120万0,000円、日本の国家予算の1.3%程度にもなる保険料が徴収できることになります。少子化や高齢化の対策で、色々な案が浮かんでは「じゃあ財源はどうする?」という議論になり、一向に進むことがないのは誰もが知るところ。「専業主婦から吸い上げればいい」という声も大きく、第3号被保険者制度は廃止へと舵を切る可能性は十分あります。

 

この事態に戦々恐々としているのが、当の専業主婦のサラリーマン世帯。総務省『家計調査』によると、専業主婦のサラリーマン世帯の平均世帯年収は684万円。月黒字額は16万9,230円なので、仮に専業主婦も国民年金保険料を払うことになれば、黒字額の10分の1が減るということになります。結構な支出ですから、気が気でないでしょう。

 

しかし財政難の日本はとにかく「取れるところから取る」という姿勢が鮮明となっています。そんななか、有力な財源としてみられている専業主婦(夫)。第3号被保険者が廃止されるのも時間の問題だといえそうです。