(※写真はイメージです/PIXTA)

加齢などが原因で発症する変形性股関節症。人工関節手術で根治する手段もありますが、人工関節の劣化による再手術や、入院期間が長いなどのデメリットが大きく、なかなか手術に踏み切れない人も少なくありませんでした。しかし近年「人工股関節置換術」が急速に進歩したことにより、手術へのハードルが下がったと、世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏先生はいいます。66歳で手術を決めた女性の事例をもとに、専門医が解説します。

最低でも120万人が発症…恐ろしい「変形性股関節症」

加齢などが原因で発症する変形性股関節症。現在日本では、X線診断による変形性股関節症の患者数が120万~510万人※1と推定され、潜在的な患者数を含めると、もっと多いと考えられています。

 

今回は20年悩み続けた変形性股関節症を、たった1回の手術で根治させ、人生を劇的に変えた患者さんを例に変形性股関節症の詳しい治療法や新常識をご紹介します。

※1 日本関節病学会HP

 

急速に進歩した「人工股関節置換術」

人工股関節置換術とは、傷ついた股関節を人工物に置き換える手術のことで、主に、変形性股関節症や関節リウマチなどの治療に適用されます。

 

近年、人工股関節の品質も術式もめざましく進化し、骨との固定性や材料の耐久性が向上しました。可動域の拡大についてもさらなる改良が進められています。術式についても、靱帯や腱などを極力傷つけない低侵襲の技法が開発されるなど、ひと昔前の手術に比べれば非常に洗練されています。

 

しかし、現在でも「人工股関節に置き換えてもいずれ劣化してしまうから、10年後には再手術しなければいけない」「手術では大きく切開するから、退院まで2ヵ月かかる」など、ひと昔前の常識に囚われ、手術に踏み切れない患者さんが多いのも事実です。今回ご紹介する、山本さん(仮名)もその1人でした。

20年間「変形性股関節症」に悩み続けた66歳女性

山本さんは20年間、股関節の痛みに悩み続けてきました。初めは右股関節に痛みが出て、すぐに左にも痛みが出るようになったとのこと。最近では5分も歩けば股関節に突き刺さるような痛みが生じ、食料品を買いにスーパーへ出かけても、休みながらでなければ売り場を1周することすらできないそうです。

 

山本さんが私のクリニックを受診されたのは2021年12月。レントゲンとCT検査をすると、重度の変形性股関節症であることが確認されたため、私はその場で両脚同時の人工股関節の手術を提案しました。

 

入院や手術は一度で済む! 「両脚同時に手術」も可能な時代に

当時、山本さんは両脚が同時に手術ができることをご存じではなかったようで、とても驚いていました。両脚に症状が出ている場合、同時に手術をした方が「入院や手術が1回で済む」「費用も安くなる」などのメリットがあります。

 

山本さんの場合、左右で脚長差が顕著に見られたのですが、左右同時に手術をすることで脚の長さをそろえやすくなるという利点もありました。あいにく手術の予定が混み合っていたので、山本さんの手術は3ヵ月後に決定。手術の前日、入院していただくことになりました。

 

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