(※写真はイメージです/PIXTA)

健康的な生活を送るうえで、口腔ケアは欠かせません。食後など適切なタイミング・方法で口腔ケアを行えないと、糖尿病の悪化や脳梗塞・心筋梗塞を引き起こす危険性もあると、森山記念病院の園田歯科口腔外科部長は警告します。むし歯や歯周病と、命を脅かす重篤な病との意外な関係性をみていきましょう。

「歯の疾患」から「全身疾患」に発展することも

口の機能は、「食べ物を咀嚼し、味を堪能し、飲み込み、消化する」という人間にとってごく当たり前で、栄養を取り込むという重要な行為に最初に関わる器官です。

 

食べ物を咬み砕き(咀嚼)・飲み込む(嚥下)には、歯や歯周組織、それに付随する顎や顔面の骨・筋肉がそれぞれ連携し、絶妙なバランスを保ちながら機能するという重要な働きを担っています。

 

近年の医学の進歩により、最近の報告では歯科疾患と全身疾患の関連性についても以下のように指摘されています。

 

①呼吸器疾患誤嚥性肺炎人工呼吸器関連肺炎

②脳血管疾患脳梗塞

③心臓疾患心筋梗塞感染性心内膜炎

④妊娠トラブル早産低体重児出産

⑤糖尿病

⑥骨粗鬆症

⑦関節リウマチ

⑧メタボリックシンドローム

 

イラスト:歯科素材.com
イラスト:歯科素材.com

 

これらのメカニズムについては、歯と歯周組織の解剖学的な特徴を知ることで、より理解が深まると考えます。

口のなかには「700種類以上」の微生物が…

歯を失う主な原因は歯周病とむし歯です。歯周病もむし歯も主として歯垢と呼ばれる細菌の塊が原因となります。食後など適切なタイミング・方法で口腔ケアを行えないと、歯とそれを支える歯周組織にはネバネバとした黄白色の粘着質な歯垢が付着するのです。

 

口腔内には700種類以上の微生物が存在し、歯垢の細菌凝集程度は湿重量1mgあたり約10の8~9乗個程度とされています。

 

歯垢は時間の経過と伴に蓄積され、石灰化した物が歯石となり、歯の周囲に歯垢・歯石が多くなると酸素が少ない環境となり、嫌気性菌が増加します。

 

細菌が増えると毒素などが増加し、体に侵入しようと攻撃をしますが、その防御反応として歯肉の炎症が起こり、腫れ出血が起こります。これが歯周病の始まりですが、この炎症反応が続くと、周囲の骨組織は直接破壊されますし、もともと歯周組織である歯肉は血流が豊富なので、血流に乗ってさまざまな部位で病気を引き起こす原因となるのです(下記イラスト左側から順に歯垢が付着し歯肉が腫れ、歯槽骨吸収が進行し、歯が抜けた状態)。

 

出所:歯科素材.com
出所:歯科素材.com

 

それぞれの疾患への作用物質や作用機序などは省きますが、歯周病の状態が続くと炎症反応は常に口のなかで起こっています。

 

炎症性の反応物質が血流によって運ばれ、血糖値を下げるインスリンの働きが抑制された結果糖尿病が悪化したり、動脈硬化が進んで脳梗塞・心筋梗塞、妊娠トラブルに繋がったりする危険性があります。

 

また、これらの細菌塊である歯垢を含んだ唾液を誤嚥することにより、細菌は肺に辿り着き、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

 

口腔内の環境を整えることが、いかに重要かをご理解いただけたと思います。

 

口腔内の環境を整えるためには日々の歯磨きといった「セルフケア」が重要ですが、それだけでは管理できない部分も大いにあります。かかりつけ歯科医院での定期的な「プロフェッショナルケア」に加え、歯肉の腫れ、歯の痛みなど異常を感じたら、早めに診察を受ける事が大切です。

 

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