日本で少子化問題が叫ばれて久しいなか、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師は、深刻な「産婦人科医不足」に警鐘を鳴らします。高所得のイメージが強い医師という職業のなかでも、脳神経外科医に次いで高い給与を誇る産婦人科医。しかし、その裏には、想像を絶する「過酷な労働環境」がありました。実はあまり知られていない「医師のお金と労働事情」について、詳しくみていきましょう。
“致死量の残業”と引き換えに“年収1,466万円”…産婦人科医が直面する「過労死、待ったなし」の惨状【医師が警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

産婦人科医の働き方…これでも「マシになったほう」の衝撃

さらに驚きなのが、実は「労働時間はこれでも年々低下している」ということです。

 

2019年の調査によると、平均年間の外勤先+時間外労働が2,000時間を超えています。どれだけつらい現実かは想像に難くないでしょう。

 

超時間外労働をしている職員の割合で見てみましょう。それぞれの周産期施設にいて「年間1,860時間以上時間外労働をしている職員の割合」は

 

● 総合周産期母子医療センター:11.1%

● 地域周産期母子医療センター:13.7%

● 一般病院:12.7%

 

となっています。

 

総合周産期センターでは、2名の当直体制をしいていますし、一般病院では常勤をする医師が少なく、外部の非常勤による支援を必要としています。

 

そのため、厚生労働省の医師の働き方改革の推進に関する検討会において、産婦人科医は勤務時間に反映されない緊急事態に備えて待機している時間が多いことがわかっています。

 

ですから、これだけ長時間の労働をいまだに強いられる職員の割合が多いのです。

産婦人科の「過剰労働」…減らす方法は存在するのか

では、今後産婦人科医の過剰労働をなくすにはどのようにすればよいのでしょうか。

 

厚生労働省では「2040年を展望した医療提供体制の改革」に向けて、

 

● 地域医療構想の実現

● 医師・医療従事者の働き方改革の推進

● 実効性のある医師偏在対策の着実な推進

 

を三位一体として推進することで、円滑なチーム医療を実現するとしていますが、いまだにこのような現状ですので、もっと社会全体の問題としてとらえる必要があるでしょう。

 

たとえば、次のような取り組みが考えられます。

 

①給与の改善

産婦人科医の給与を適正に評価し、他の診療科との格差を解消することで、医学生や若手医師が産婦人科を選ぶ意欲を向上させることができるでしょう。

 

たとえば、アメリカでは全米で19,800人いる産科医および産婦人科医は、年俸234,310ドル(1ドル135円計算でおよそ3,163万円)となっており、アメリカで収入の高い職業ランキングのトップ10に入っています。過酷な労働が強いられる産婦人科だからこそ、それに見合う給与が求められてしかるべきでしょう。

 

日本でも、三重県尾鷲(おわせ)市は2005年9月、年収5,520万円という高い報酬を保証し、津市で開業していた産婦人科医を尾鷲総合病院に招へいした報道があったことは、みなさんの記憶にあるかも知れません。