日本では毎年約100人の幼い命が「乳幼児突然死症候群」で失われており、この原因はいまだ解明されていないと、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。毎年100人と、可能性としては高くないものの、愛しいわが子がもしもこの原因不明の疾患に襲われたら……。今回、小児科医の秋谷氏がさまざまな論文をもとに、「乳幼児突然死症候群」の予防策を解説します。
乳幼児を襲う“原因不明の突然死”…毎年100人が発症する「乳幼児突然死症候群」からわが子を守るには【小児科医が警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

愛しいわが子の命を奪う「乳幼児突然死症候群」の恐怖

ある日突然、自分の大切なわが子が息を引き取っている。しかも、原因もわからず眠っている間にひっそりと……想像するだけで、いたたまれない気持ちになりますよね。

 

そんな疾患があるのか? と思われるかもしれませんが、実際にあるのです。「乳幼児突然死症候群」といいます。実は、乳幼児突然死症候群で毎年約100人の幼い命がなくなっています。

 

乳幼児突然死症候群はなぜ起こるのか、そしてなにより、乳幼児突然死症候群を防ぐためにはどうすればよいのか。最新の論文から解説していきます。

乳幼児突然死症候群とは

乳幼児突然死症候群(SIDS:SuddenInfantDeathSyndrome)とは、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく、眠っている間に突然亡くなってしまう疾患のこと。

 

乳幼児突然死症候群の原因はまだはっきりわかっていません。にもかかわらず、年々減少しているとはいえ、2021年人口動態統計では乳幼児の死因として第3位にあげられています。

 

こうしたなか、数多くの研究により、乳幼児突然死症候群を予防する手だてがいくつか試みられています。今回は数ある論文のなかで、小児科雑誌として非常に有名な「Pediatrics」の報告を取り上げます。

 

最新の論文からわかった「乳幼児突然死症候群」を発症するケースの共通点

2023年の最新の論文では、2016年から2017年までの疾病管理予防センターのデータから112例の窒息症例と448例の対照群、300例の原因不明の乳児死亡例と1,200例の対照群を比較して、

 

●もともとの状況:人種、母親の年齢、母親のタバコ、出生前ケア、妊娠期間など

●死亡した状況:睡眠位置ややわらかい寝具の使用、睡眠の地面がどんなものであったか、一緒に寝ていたかなど

 

に至るまで、こと細かく分析されました。

 

そこでわかったことは、まず乳幼児突然死症候群が確認されたケースでは、妊娠中の母親の喫煙や2人以上の出産経験、早産している確率などが高くみられました。

 

つまり、もともとの母体や胎盤の状況、母親の喫煙状態などが乳幼児突然死症候群に大きくかかわっていることがわかります。厚生労働省では、乳幼児突然死症候群のガイドラインとして、「母乳で育てること」と「母親のタバコをやめること」を指摘しています。