日本で少子化問題が叫ばれて久しいなか、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師は、深刻な「産婦人科医不足」に警鐘を鳴らします。高所得のイメージが強い医師という職業のなかでも、脳神経外科医に次いで高い給与を誇る産婦人科医。しかし、その裏には、想像を絶する「過酷な労働環境」がありました。実はあまり知られていない「医師のお金と労働事情」について、詳しくみていきましょう。
“致死量の残業”と引き換えに“年収1,466万円”…産婦人科医が直面する「過労死、待ったなし」の惨状【医師が警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

産婦人科医を悩ませる「訴訟リスク」の恐怖

②労働環境の改善

給与の改善も大切ですが、産婦人科医の過労を解消するために、医療機関は医師の勤務時間を適切に管理し、休日や休暇を確保することももちろん重要です。

 

また、緊急時の対応体制を整えることで、医師の負担を軽減することができます。

 

③訴訟リスクの軽減

産婦人科医になりたがらない理由の1つとして、「訴訟リスクが高い」ということがあげられます。

 

みなさん、「赤ちゃんは元気に生まれて当然」という意識がどこかにありませんか? それは大きな間違いです。赤ちゃんを元気に産むというのは人生の1大イベント。いろんなアクシデントが起こる可能性も十分あります。そんな時に、安全に産めるようにガイドをするのが産婦人科医の役目です。

 

しかし、「元気に生まれてあたりまえ」と思っている場合、なにかアクシデントがあると訴訟に発展しやすくなります。その矢面に立つのも産婦人科医なのです。

 

そのため、こうした訴訟リスクが高い職業にはなるべく就きたくないと考える医師は少なくないでしょう。

 

医療過誤や訴訟に対する不安を軽減するために、医療機関は医師に対する研修や教育を充実させることが求められますし、社会全体での意識も変えていかなければなりません。

 

④社会全体での支援

このように、さまざまな側面から医師が「産婦人科になりたがらない」傾向にあるのも事実。また、地域によっても大きく医師の配分が異なっているのも問題です。

 

こうした現状を変えるために、地域や行政、企業などが連携して支援することが重要です。たとえば、保育施設の整備や育児休暇制度の拡充など、産婦人科医が仕事と家庭を両立しやすい環境を作ることが求められます。

まとめ…日本を「安心して子どもが産める社会」に

日本の少子化問題は確かに非常に重要です。その意味で「教育を自由にさせてあげる」「子どもが育てやすい社会にする」ことも大切だと思います。

 

しかし、子どもがまず産みやすい社会にしないと育てることもできません。

 

日本の少子化対策の一環としてまず産婦人科医の今の現状に目を向けつつ「安心して子どもを『産める』社会」を実現していってほしいと思います。

 

 

秋谷 進

東京西徳洲会病院小児医療センター

小児科医