日本で少子化問題が叫ばれて久しいなか、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師は、深刻な「産婦人科医不足」に警鐘を鳴らします。高所得のイメージが強い医師という職業のなかでも、脳神経外科医に次いで高い給与を誇る産婦人科医。しかし、その裏には、想像を絶する「過酷な労働環境」がありました。実はあまり知られていない「医師のお金と労働事情」について、詳しくみていきましょう。
“致死量の残業”と引き換えに“年収1,466万円”…産婦人科医が直面する「過労死、待ったなし」の惨状【医師が警鐘】 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本の少子化問題と「産婦人科医不足」との切っても切れない関係性

最近、日本でも少子化対策がしきりにいわれていますね。「異次元の少子化対策」として、児童手当の所得制限撤廃をはじめ、分娩における保険適応なども検討されています。

 

そのようななかで、直面してくる問題は「産婦人科医不足」です。日本では産婦人科医不足が深刻な問題となっており、多くの病院やクリニックが産婦人科医(特に産科)を求めています。

 

もし産科の先生が少なくなったら、子どもを安心して産むこともできなくなります。ましてや、子どもを産む年齢層も高くなっている現代ではなおさらです。

日本の産婦人科医の現状は?

厚生労働省の「令和3年(2021年)賃金構造基本統計調査」で医師の平均年収は1,378.3万円と算出されています。なお、2012年独立行政法人労働政策研究・研修機構の勤務医の就労実態と意識に関する調査では、宿直翌日の勤務体制では産科・婦人科医は95.2%が通常勤務をしていることが明らかになっています。

 

宿日直手当等により、産科・婦人科医の年収は同調査において脳神経外科医に比して2番目の年収となっていますが、これだけの激務に基づいた結果といえます。

 

[図表]診療科別年収順位(2012年独立行政法人労働政策研究・研修機構の勤務医の就労実態と意識に関する調査から作成)
[図表]診療科別年収順位(2012年独立行政法人労働政策研究・研修機構の勤務医の就労実態と意識に関する調査から作成)

 

そして、2021年に行われた「日本産婦人科医会施設情報調査」では、産婦人科医のいまだに厳しい現状が報告されています。

 

まず、施設ごとの年間就労時間については

 

● 総合周産期施設:時間外在院時間1,020時間+外勤先の労働時間874時間

● 地域周産期施設:時間外在院時間900時間+外勤先の労働時間864時間

● 一般病院:時間外在院時間912時間+外勤先の労働時間1,008時間

 

となっています(外勤先もほぼ時間外労働が主体)。

 

少し想像してみてください。どの施設も年間およそ1,900時間は時間外労働をしています。12ヵ月で割ると、1ヵ月あたりおよそ158時間の時間外労働ということになりますね。

 

厚生労働省によると、過労死との関連性が強いとされる時間外労働は1ヵ月あたり100時間以上、もしくは2〜6ヵ月の平均が80時間以上です。

 

つまり、産婦人科の平均時間外労働は「過労死を大幅に超える時間外労働が現在でも続けられている」ということになります。