同期入社で結婚、共働きで定年まで働いたL夫妻は、多忙ながらも順風満帆な人生を送ってきました。事故で足を悪くした妻のため、自宅を売って有料老人ホームに入居したLさん。新たな住まいで快適な暮らしを満喫していたL夫妻でしたが、入居後届いた請求書をみて、Lさんは愕然としました……。今回、株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也氏が、L夫妻の事例をもとに「安易な老人ホーム選び」の危険性を警告します。
年金月29万円、退職金2,400万円の68歳・勝ち組夫婦…余裕の老後が一転、驚愕の“老人ホーム請求額”に夫「なにかの間違いでは」【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

思わず涙…Lさんが犯した「致命的なミス」

年金を踏まえた年間収支の赤字を「100万円程度」と見積もっていたLさんでしたが、月々8万円の差が発生した場合、想定よりもさらに96万円の負担となります。

 

年100万円ほどの持ち出しであれば、3,000万円ある預金を取り崩しながら30年はもつため、100歳まで十分と思っていました。しかし、持ち出しが年間200万円となると、15年もすると資金が底を尽きてしまいます。現時点で介護を受けているのは妻だけですが、これから先、自分も介護が必要となった時のことを考えると、15年すら危うい状況です。

 

毎月恐ろしい勢いで減っていく通帳の預金残高を見ながら、憂鬱な気持ちで日々を過ごすLさん……郊外の自宅で過ごしていた悠々自適な日々を思い出し、思わず涙が溢れたそうです。

 

なぜ老人ホーム請求額がこんなに違う?…パンフレットに潜む「落とし穴」

HPやパンフレットの表記に老人ホームで必要となる月額費用が掲載されていますが、サービス内容や金額は施設によって異なります。

 

主な項目として「家賃」「管理費」「共益費」「食費」「水道光熱費」「介護サービス費」などがあります。

 

「家賃」は部屋の広さや設備によって料金が変わります。パンフレットに記載されている月額利用料は最低限の内容のみ記載されていることが多く、その他の実費の負担もあいまって実際の支払いは想定しているよりも高額となります。

 

たとえばサービス付き高齢者向け住宅では、食事の提供は任意のため月額費用に含まれていない場合があります。また、介護保険サービスの範囲外のことを頼むと別途オプションサービスとして実費がかかります。

 

下記はオプションサービスの一例です。

 

■電球の交換

■食事の配膳

■服薬の管理

■買い物代行

■理美容代

■夜間の見守り

■リネン洗濯代

■居室まで郵便物を運ぶ

 

ただし、施設によっては「管理費」や「共益費」に上記の費用が含まれる場合もあります。

 

住宅型有料老人ホームの場合、HPやパンフレットに具体的に金額が載っている主な項目は「家賃」「食費」「管理費」です。

 

サービス付き高齢者住宅と同様に「介護保険の実費負担」「医療費」「その他オプション」などについて具体的な金額が掲載されていないことがあり、パンフレットの金額と実際の費用負担は5~10万円前後の差が発生する可能性があるため、注意が必要です。

 

【月額費用に含まれないことがある費用】

 

■介護サービス費(自己負担分)

■オプション費用(介護保険適用外のサービス)

■医療費・薬代

■レクリエーション費用

■日用消耗品

■水道光熱費など

 

上記については個人差があり、利用内容に応じて請求されるため、パンフレットに記載されないことがあります。

 

では、Lさんのような「想定外の高額な支払い」を発生させないためにはどうすれば良いのでしょうか?