同期入社で結婚したK夫妻。結婚後もともに総合職としてバリバリ働いてきました。40歳で第一子が生まれましたが、退職金も夫婦合わせて2,500万円あり、申し分ありません。ところが、予想外の事態が起こります……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也氏が、K夫妻の事例をもとに、老後を見据え考えておきたい「遺族年金」や必要な介護費用について解説します。
共働きで退職金2,500万円の「63歳・勝ち組夫婦」…余裕の老後のはずが一転、妻「死ぬまで働きます」のワケ【AFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

予定外の高齢出産…2馬力の世帯年収も「まさか」の事態に

同じ会社に同期で入社したK夫妻。29歳で結婚し、相談のうえ「子どもはいらない」と考え、ともに総合職でバリバリ働きながら思う存分贅沢をする、悠々自適な生活を送っていました。

 

しかし、39歳で妻がまさかの妊娠。40歳で第1子を出産しました。子どもが生まれたあとは旅行や外食といった贅沢の頻度を抑えながら、子どもが3歳になったタイミングでマイホーム(4,000万円のマンション)を購入。ローン額は、60歳定年時に2,000万円ほど残る程度です。

 

2馬力の世帯年収でその後も特に不自由なく生活し、退職金も2人で合計2,500万円ほど受け取ったそうです。

 

子供も大学を卒業し、これからは2人で楽しい老後を過ごそうと計画を立て始めた矢先、夫が交通事故で急逝。63歳でした。

 

残された妻は途方にくれます。それもそのはず、描いていた「余裕の老後生活」は夫との2馬力の収入でした。さらに、退職金は住宅ローンの繰り上げ返済と子供の大学費用に消えています。決定的なのが、子供が大学を卒業したタイミングで保険を見直しており、死亡時保障の手厚い保険を解約してしまっていたのです。

Kさんの妻に対する国の補償…受け取れる「遺族年金」の額は?

「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者が亡くなった際、被保険者に生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2つがあり、亡くなった方の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

 

遺族基礎年金の対象となるのは「子のある配偶者」もしくは「子」です。K夫妻の場合お子様がいらっしゃいますが、ご主人が亡くなった時点で成人されているため、これを受け取ることはできません。

 

ただ、Kさんが亡くなったご年齢が63歳であるため、妻は遺族厚生年金の「中高齢寡婦加算」を65歳まで受け取ることができます。

 

「中高齢寡婦加算」とは

遺族厚生年金においては、夫が亡くなったときに妻の年齢が40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない場合、65歳になるまでのあいだ58万3,400円(年額)が加算されます。

 

65歳以降の遺族厚生年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4となります。ただし、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の1/2と自身の老齢厚生(退職共済)年金の1/2を合算した額」を比較し、より高いほうが遺族厚生年金として支払われます

※ 日本年金機構「遺族年金」より

 

K夫妻は共働きで、妻は産後の早い時期から職場復帰されていたため、妻が受け取る65歳以降の年金について影響はほとんどありませんでした。

 

Kさんの妻が受け取る年金額は月額約15万円です。日々の生活費は20万円ほどかかるため、不足している5万円をなんとかする必要があります。

 

【生活費の内訳】
・食費……4万円
・住宅関連費……5万円
・水道光熱費……1,5万円
・医療費……5,000円
・交通費……1万円
・衣服、美容関連費……2万円
・趣味……1万円
・通信費……5,000円
・保険料……1,5万円
・その他……約3万円