KさんとRさんは、年収1,100万円の妻と年収320万円の夫、いわゆる「格差婚」と呼ばれる夫婦です。ふたりはペアローンを組み住宅を購入しましたが、2年後に夫の浮気が発覚し、離婚することに……。本記事では、格差婚夫婦の事例とともに、ペアローンの落とし穴について長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
年収「35歳妻1,100万円・37歳夫320万円」の“格差婚夫婦”、ペアローンで住宅購入…夫の浮気発覚で妻が“2度”後悔したワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

その後の住宅ローンはどうなってしまうのか?

(※画像はイメージです/PIXTA)
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夫と浮気相手で妻の住宅ローンを買い取れ、という要求をした妻Kさんでしたが、実際はどのような手続きになるのでしょうか。妻Kさんが住宅ローンの今後の扱い方の相談で弊社にいらっしゃいました。しかしこのケース、大変な問題が隠れていてスムーズには解決しないであろう旨をKさんに伝えました。まず状況を整理します。

 

・夫Rさんの年収は320万円

・消費者金融とクレジットカードで事故を起こしている

・妻Kさんの住宅ローンの残債は3,300万円程度

・夫の浮気相手は29歳、アルバイト

 

次に今後の手続きの前提となる住宅ローンの取扱ルールとしては次のとおりです。

 

・離婚の事実は銀行には無関係

・離婚して家を出ようとも妻Kさんの債務は無くならない

・債務を他人に譲渡することはできない

・慰謝料請求と住宅ローンの扱いは別

・自宅の評価額よりも住宅ローンの残債が大きい「オーバーローン」の場合、自宅は財産分与の対象にはならない

 

妻Kさんが夫への怒りで家を出ていきたい気持ちはわかりますが、住宅ローンの後始末は問題が山積みです。妻Kさんが住宅ローンから解放され、無事離婚し新しい生活を始めるための対策をいくつか説明しました(実際の実務は弁護士を交えた離婚協議が必要であるのは、いうまでもありません) 。

 

対策1.夫が妻から「負担付贈与」を受ける

難しい言葉ですが、これは「夫が銀行から追加融資を受けて、妻の持分の贈与を受け、妻の債務の移転を行うこと」です。これが上手くいけば、住宅ローンも自宅も夫名義となります。 しかし夫Rさんの年収から考えると、妻Kさんの分の融資を受けるのは不可能です。ましてや消費者金融で事故を起こしているため絶望的です。

 

対策2.夫が再婚して浮気相手と再びペアローンを借りる

夫が浮気相手と再婚し、違う銀行からペアローンを借り、妻Kさんから持分の贈与を受け債務の返済をする方法があります。しかし、浮気相手はアルバイトであるため住宅ローンは借りられません。この場合もそもそも夫Rさんが金融事故を起こしているため不可能です。

 

対策3.夫が継続して住宅ローンを返済していく

住宅ローンの債務も家の持分も現状維持のまま、夫が住宅ローンの返済を1人でしていく方法です。 弁護士を交えて離婚協議をした場合、この方法に着地することが多いかもしれません。しかしファイナンシャルプランナーの立場としては絶対に避けなければなりません。

 

まず、夫の年収では残り33年間も返済していけないでしょう。すでに金融事故を起こしているため信用がまったくありません。もし夫が自己破産をしたら、銀行は共有名義人がいようが、この家を競売にかけます。競売で清算できない債務が残れば妻Kさんに一括返済の請求が来ます。 信頼関係が崩壊しているなかでこの方法を採用するのは避けるべきです。

 

対策4.夫が転職し年収を上げ、信用情報から事故情報が消えたら借換する

夫が転職に成功し、信用情報から事故情報が消えて、住宅ローンを融資してくれる銀行が見つかるという曖昧な未来に期待するほど、夫婦間に希望がないので却下です。それまで夫が1人で返済するというのも前述のとおり無理でしょう。

 

対策5.夫が住宅ローンを借り換え単独名義にする

別の銀行で住宅ローンを単独債務として借り、妻の住宅ローンを完済させ持分を移転する方法です。対策1と同じく、年収が低いことと金融事故を起こしているため不可能です。

 

対策6.自宅を売却する

自宅を任意売却する方法です。これは最も採用される方法ですが、大きくオーバーローン状態となります(債務が残ってしまう) 。残りの債務は無担保ローンを借りるなどして清算するのが一般的ですが、これもまた金融事故のため不可能です。任意売却は抵当権を持つ銀行が認めないでしょう。

 

と、ここまで見てきた対策は全て、不貞行為は関係なく、夫Rさんの収入の低さと金融事故が原因で不可能になっています。「格差婚」の是非はともかく、収入格差がもたらすいざという時のリスクをもっと事前に考えておくべきでした。