「老後を見据えて、貯蓄はいくら必要か」と問われたとき、多くの人は「2,000万円」と答えるでしょう。しかし、その金額はあまり意味のないものだといえるようです。みていきましょう。
夫婦で「年金月27万円」「貯蓄2,000万円」でも…余裕のはずが一転!「老後破産」に陥る理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけで生活費が賄えても、預貯金が十分でも、老後に安心はない

このようにみていくと「老後資金、2000万円も必要ないんじゃない⁉」と考える人がいても当然。また老後夫婦の消費支出は22万~23万円ほどなので、税金や保険料など加味すると夫婦で27万円ほどの年金があれば、生活費のすべてを年金だけで賄うことができます。さらに貯蓄も2,000万円達成していれば、言うことなし。想定外の出費などがあっても、余裕で対処できるでしょう。

 

そんな用意周到、余裕綽綽の高齢者夫婦でも一転、「老後破産」に直面するかもしれません。

 

老後一転の理由①:物価高騰

昨今、世間を賑わせている物価高騰。たとえば1ヵ月の電気代。総務省統計局『小売物価統計調査』によると、直近底値だった2021年1月は平均1万1,936円(従量電灯、最低料金制、441kWh)。今年1月と比較すると、この間、30%ほどの値上がりとなりました。収入が年金だけというケースが多い高齢者世帯。物価高に対しては非常に弱く、一気に生活苦に陥ってしまいます。

 

老後一転の理由②:年金減額

将来の年金がどうなるか……そのひとつの指標が所得代替率です。年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを示す値で、2019年の財政検証では61.7%でした。2046年~2047年には50.8%~51.9%となるとシミュレーションされています。50%以上を維持できると予測されていますが、逆を言うと、年金は今後2割ほど目減りするということ。現段階の年金額を基準に老後のライフプランを検討すると痛い目にあうでしょう。

 

老後一転の理由③:長寿

2022年、日本人の平均寿命は男性で81.47年、女性で87.57年。今後さらに延びることが想定されています。また、この平均寿命はあくまでも平均値。多くの人が平均寿命以上に生きるわけです。そのようななか、平均寿命を基準にしたマネープランだとすると、当然、長生きすればするほど生活が苦しくなることは明らかです。

 

このようにみていくと、どんなに用意周到に老後を見据えて資産形成を進めたところで、すべては無駄に思えるでしょう。老後の安心のためには「ここまでしたら大丈夫」という上限はないのです。