コストが上昇してしまう根本的な理由
LCCが当初計画に比べて上昇したのは26品目のうち14品目。1機当たりの上昇率は、「輸送機(C-2):約104%」、「哨戒(しょうかい)機(P-1):約68%」、「哨戒ヘリコプター(SH-60K):約53%」の順に高く、14品目の上昇率は平均約20%だった。
コスト上昇の要因を見ると、14品目のうち10品目は、維持管理や補修に必要な部品である「補用品」のコストが当初計画より増加していた。10品目の部品コストの上昇率は平均約38%に達し、最大は哨戒ヘリで当初計画の約3倍に膨らんでいた。
また、14品目のうち国産が10品目を占めた。
一般的に製品が量産段階になるとコストは低下する。
しかし、政府は防衛装備品の輸出に一定の制限をかけており、海外向けの量産は見込みにくいことから、コストが高止まりする傾向にある。さらに、調達契約を結んだ後に仕様変更が相次いだこともコスト上昇の要因になっていた。
防衛省は、重要な装備品のLCCを毎年更新し、LCCが前回の見積もりから30%以上上昇すれば「計画見直し」、50%以上上昇すれば「計画中止を検討」としている。
防衛省の外局で、装備品の開発や調達を所管する防衛装備庁の担当者は、上昇率が高い装備品の調達計画について、「従来の見積もりが甘かった面は否めない。(見直しや中止も)甘んじて受けざるを得ない」と話している。
ただ、コストの査定がおざなりのままでは防衛予算は野放図に膨張しかねない。前述の土居丈朗教授は、次のように指摘する。
「国内防衛産業(市場規模約3兆円)を守るという大義名分から政府のコスト意識は低く、防衛装備品のコストが膨張しても罪悪感が少ないのではないか。
『防衛力の抜本的強化』の方針は、割高な装備品の購入を認めたわけではない。政府、防衛省はより少ないコストでより効果的な装備を配備する発想を持つべきだ」
高橋 祐貴
毎日新聞社東京本社経済部
記者